農地のマーケットが次なるバブル候補だ--ロバート・J・ シラー 米イェール大学経済学部教授
2009年に世界の株式市場は底を打った後、急速に回復に向かっている。S&P500の株価指数は、09年3月9日以降、実質ベースで87%上昇している。株式市場予測の歴史は累々たる失敗の歴史でもあり、現在の株価反転が長期にわたって続くかどうか判断することはできないが、バブルでないことは確かだ。恐慌状態のパニックが終わったために上昇に転じたのだろう。今回の株価上昇は、人々が感染しやすい“新しい時代”の物語ではなく、恐慌後の“安堵のため息”の物語を伴ってやってきた。
農地ブームを支える感染力のある物語
現在の1次産品市場のブームはこれからも持続しそうである。なぜなら1次産品ブームは“新しい時代”という物語に支えられているからだ。地球温暖化に対する懸念の高まりと食糧価格への影響、あるいは北半球での寒波襲来と燃料価格への影響という感染しやすい物語が、そのブームの背景にある。
さらに、このブームは毎日、新聞のトップ記事になる事件、すなわち食料品の価格上昇に対する人々の不満が引き金となって中東で起こった革命運動と結び付いている。革命運動は、やがて石油価格の上昇を引き起こす可能性がある。
だが、私が今後10年間のバブル候補のダークホースだと考えているのは農地である。たとえば10年の米国の農地の総価値は1・9兆ドルで、株式市場の16・5兆ドル、住宅市場の16・6兆ドルと比べるとあまりにも小さい。大規模な農地バブルが起こるのは本当にまれだ。20世紀中に米国で農地バブルが起こったのは、70年代の1回だけである。しかも、その背景には人口増加に対する大パニックがあった。