高齢者を支える流動食、東日本大震災で支援要請が殺到
世界初の「無菌充填バッグタイプ流動食」を開発したのもクリニコだ。牛乳ベースの流動食は、煮ると茶色に変色し、味や栄養成分が落ちる。が、無菌充填し、超高温で瞬間滅菌をすると牛乳の色、味、栄養成分を維持することができる。「患者さんがゲップをしたとき、薬ではなく食べ物の風味が感じられれば生きる気力になる」(森永乳業)。
営業でもきめ細かさを重視している。全国43カ所の営業拠点に計約250名の社員を擁し、8割以上が女性だ。業績は毎年約10%成長を維持しており、10年度は売上高約280億円、20年度には同1000億円を目標に掲げている。牛乳などが厳しく売上高の横ばいが続く森永乳業にとって、クリニコは重要なグループ企業となっている。
調査会社のシード・プランニングによれば、現在の介護食市場規模は1100億円以上、14年度には1630億円に達するとの試算だ。また、業界2位の明治によれば、14年の流動食市場は850億円を超える見込み。流動食は介護食の中で大きな伸びが期待されている。
好調な理由は大きく分けて二つ。「価格」と「利便性」だ。
20年に、日本の人口構成は4人に1人が高齢者という「超高齢化社会」に突入する。それを見据え、医療費削減のために導入された「包括医療制度」。保険で決めた上限の額以上を支払わないこの制度が、流動食の普及に一役買っている。
もともと介護食は、医薬品と食品に分類される。日本流動食協会は、「医薬品タイプは医師の処方が必要。食品タイプは食事の一環」と違いを説明する。医薬品タイプで、血管を介する栄養輸液は1キロカロリー当たり2円、経腸栄養剤は1円。一方、食品タイプの流動食は0・6円と安い。