東日本大震災は半導体再編を招くか、ルネサス、エルピーダの葛藤
自動車のエンジンなどを制御する半導体のマイコンが、深刻な供給不足に陥っている。同分野で世界最大手ルネサスエレクトロニクスの工場が被災したためだ。中でも大きな影響を及ぼしているのが、マイコン生産の25%を担っていた茨城県・那珂工場の生産停止。マイコンはカスタム品のため、短期間に他の半導体メーカーが代替生産するのは難しい。しかも、ルネサスは自動車用マイコンで世界シェア40%を占め、自動車メーカーは大幅な減産を余儀なくされている。
目下、那珂工場の復旧作業は急ピッチで進む。取引先の自動車メーカーなどが応援要員を送り込んでおり、1日に最大約2500人が復旧作業を支援。その結果、当初7月に予定していた生産ラインの一部再開が、6月15日に前倒しできる見込みとなった。
それでも完全復旧は遠い。再開するのは、直径200ミリメートルのシリコンウエハを材料に用いる生産ライン。従来の能力は月産3・4万枚だが、6月15日時点で生産のメドが立っているのは、わずか3000枚。300ミリメートルのウエハを使うもう一つのラインは、「7月から一部再開を目指す」とした当初計画のままだ。他工場での代替生産なども並行して進めるが、震災前の水準に回復する時期ははっきりしない。再開の前倒しは、「部品を確保したい自動車メーカーに突き付けられた要求だった」(業界関係者)との見方もある。
顧客の調達先分散で追い込まれる日本勢
一方、同じ半導体メーカーでも好調なのが、DRAMを製造するエルピーダメモリとNAND型フラッシュメモリの東芝だ。両社は震災後もフル生産が続く。エルピーダに至っては、震災後にDRAMの需給がタイトになり、市況が上昇。業績改善期待から、ここに来て証券会社の投資判断引き上げも相次いでいる。
明暗を分けたのは工場の立地。エルピーダは広島、東芝は三重が主力拠点で、震災の被害を受けなかった。
ただ、この先の安定生産となると、不透明な部分が多い。