東芝の米国案件が頓挫、崩れゆく原発輸出ビジネス
「日本の原発事故で状況が一変した」(米NRGエナジー、デイビッド・クレインCEO)。4月半ば、東芝が参画していた米国の原子力発電所計画が頓挫した。東芝と手を組んで原発の増設を計画していた電力大手のNRGエナジーが、投資を打ち切ると発表したのだ。
その案件はサウステキサスプロジェクト(STP)原発の3号機と4号機。東芝にとっては初の海外受注で、建設費用は100億ドル(約8200億円)。2016~17年に運転を開始する計画だった。
3月半ば、NRGは東京電力福島原発の事故を受けて米原子力規制委員会(NRC)が安全基準見直しに動いていることなどを理由に、許認可手続きを除くすべての作業を中断。事態はその後さらに深刻化し、投資を打ち切らざるをえなくなった。
クレインCEOは、計画が完全になくなったわけではないとしながらも、「株主に対して、これ以上の投資を正当化することはできなくなった」とコメント。NRGは、STP原発の3号機・4号機に関する資産を減損し、2011年1~3月期決算で4・81億ドル(約400億円)の特別損失を計上する。
STP原発は、東芝との合弁企業(当初の出資比率はNRG88%、東芝12%)が開発を担当している。今回減損の対象となった4・81億ドルの資産のうち、1・5億ドル(約120億円)は東芝の持ち分。「新たな提携先と交渉中で、減損の必要はない」(同社)とするが、財務的な影響へ発展する可能性もある。
東芝は06年に米国の原子炉メーカー、ウエスチングハウス(WH)を約54億ドル(約6200億円=当時)で買収。日本の原子炉メーカー3社(東芝、日立製作所、三菱重工業)の中でも、特に原子力事業への傾斜を強めてきたが、戦略の抜本的な見直しは避けて通れないだろう。