「エクストレイル」高評価でも実績が振るわない訳 納車遅延の解消でRAV4やCX-60を超えられるか

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これは、日産が世界で初めて量産化を成功させた「可変圧縮比機構」を持つもの。圧縮比を変えることで、低負荷から高負荷の領域まで常にベストな状態の燃焼ができるため、ハイパワーかつ省燃費となる。

新型エクストレイル、e-4ORCEのパワートレーン(写真:日産自動車)
新型エクストレイル、e-4ORCEのパワートレーン(写真:日産自動車)

過去に、世界中の自動車メーカーが実現化に挑み、そして敗れ去ってきた技術だ。そのため“夢のエンジン”とまで呼ばれていた。それを日産は、20年以上の研究期間をかけて世界で初めてモノにしたのである。まさに「技術の日産」を証明するエンジンと言えよう。

この“夢のエンジン”VCターボによって、エクストレイルでは本来2.5リッター相当の大きなエンジンが必要なところ、小さな1.5リッターで済んでいる。また、エンジン回転数を低く抑えることもでき、それが静粛性アップに貢献する。

ドライブモードセレクターにより走りを変化させることもできる(写真:日産自動車)
ドライブモードセレクターにより走りを変化させることもできる(写真:日産自動車)

実際にエクストレイルを試乗してみると、VCターボがいい仕事をしていることがわかる。加速はリニアで力強いのに、ノイズや振動は少ないのだ。

また、ブラッシュアップされたモノコックや電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」によりハンドリングには信頼感があり、乗り心地も上質。日産の高い技術を結集させたSUVであると実感できた。

2週間で1万2000台受注も登録は5カ月で1万台

そんな新型エクストレイルは、発売2週間で1万2000台を超える受注を獲得している。これは、かなり優秀な成績だろう。

2013年12月に発売となった先代モデルは、3週間で1万1000台の受注であった。また、2015年にハイブリッド版がリリースされたときは、受注1万台を突破するのに2カ月かかっている。

2013年に発売した3代目エクストレイル(写真:日産自動車)
2013年に発売した3代目エクストレイル(写真:日産自動車)

受注1万台を最速で突破した事実は、新型エクストレイルの人気の高さを示すものといえるだろう。

ところが、実際にユーザーの手に渡った数となると、それほど多くない。2022年8~12月までの5カ月間の新車登録台数は、1万0554台(一般社団法人日本自動車販売協会連合会調べ)に過ぎない。

なんと、発売2週間までに得た受注分を、納車できていなかったのだ。発売から1年を経て、ようやく見かけるようになってきたのは、それが理由である。

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