クレカで乗車、鉄道「タッチ決済」海外での存在感 ロンドンは導入約10年で交通系カードを圧倒

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それより前の2003年から、ロンドンではSuicaなどとよく似たプリペイドスタイルのICカード「Oyster(オイスター)」を導入している。区間によっては、現金などで片道切符を買うとオイスター利用と比べて3〜4倍高い運賃を取られるということもあり、一気に普及。オイスターを買い求める旅行者が空港駅やターミナル駅で長蛇の列をなす光景も日常的だった。

ところが、タッチ決済で乗車できるようになった結果、旅行者の列は一気に解消した。大多数を占める欧州大陸からの旅行客らは、自分のカードでそのまま改札を通って目的地へ向かうことが可能になったためだ。

oyster 販売機
「オイスター」は購入時に7ポンド(約1280円)のデポジットが必要だ(筆者撮影)

チャージせずそのまま乗れるという仕組みは、旅行者だけでなくロンドン市民にもインパクトを与えた。英国の公共放送BBCが報じた2021年時点の統計では、地下鉄やバスに乗る人々の4分の3はタッチ決済を使用。オイスターの利用者は全体の4分の1まで圧縮されたことになる。日本では、クレジットカードなどによる乗車方式の導入は「多様な決済手段を提供する」という狙いがあると思われるが、ロンドンでは交通系ICカードをすっかり駆逐してしまっている。

筆者の実見としても、オイスターの利用者はすでにほとんどいないのが現状だと感じる。現在も使っている利用者層は、主に学生と高齢者とみられる。60歳以上の高齢者には記名・写真付きのオイスターをベースとした老人パスが配布されているのと、クレジットカードや銀行カードでは学生向け割引や小児運賃の判別ができないため、これらの運賃の利用者はオイスターを使わざるをえないからだ。

イギリス 空港駅 切符売り場
空港駅のチケット売り場。今や切符を購入する人はほとんどいない(筆者撮影)

運賃引き落とし額「上限」制度も

ロンドンでは、タッチ決済の導入に先立ち、地下鉄とナショナルレール(旧国鉄)の郊外区間を含む半径約50km圏内の交通機関について、オイスターを使えば全て通し運賃で乗れるという統一化を行った。

ロンドンはもともと、中心部を「ゾーン1」、郊外地区を「ゾーン9」とする同心円状のゾーン式による運賃設定となっている。運行事業者や交通業態の違いを無視して設定されており、(地下鉄とナショナルレールとでは、同じような区間に乗っても運賃が上下する、という問題は今も残るものの)どんな鉄道に乗っても共通の通し運賃で乗れるというルールは思い切った施策といえよう。

これに加えて、ロンドンには「運賃キャップ」という制度がある。これは、ゾーンごとに運賃の上限が設定されており、引き落とし額がある一定額に達すると「それ以上課金されない」という仕組みだ。

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