② 今しかできない経験への支出
ビル・パーキンズ氏の話題の書籍『DIE WITH ZERO』(ゼロで死ね)にある例だが、バックパックを背負った貧乏旅行で世界を回るような体験は、本人が若いときでなければ難しいだろう。貴重な経験は、知識として持ち主のその後の人生で役立つ可能性のほかに、思い出には「早く作るほうが、記憶を長く楽しめる」効果もある。
旅行、スポーツ、飲食などの一部には、若くて体力のあるときでないと十分に楽しめない体験が確かにある。お金は有効なときに使わないともったいない。「この機会を逃すと後がない」と思われるようなイベントの体験も同様だろう。音楽や格闘技の試合などがイメージできる。
筆者(現65歳)よりも少し上の世代だと、ビートルズ来日公演などがそのようなイベントだったか。筆者は高校生のときに、薬物等の依存症から回復して来日した「ギターの神様」エリック・クラプトンのコンサートが同様の貴重な機会になるかと思って、チケットを手に入れた。
だが、クラプトン氏はその後すっかり元気になって、今では毎年のように日本公演を行う親日アーティストになった。まあ、これは結構なことだと思うべきなのだろう。
「楽しむための経験基盤」構築も
③ 成長する経験への支出
投資というよりも消費だけれども、それを十分楽しむためには経験基盤の蓄積が必要なタイプのものがある。歌舞伎でも落語でも、趣味として十分に堪能できるようになるためには鑑賞の蓄積が必要だし、時々の旬の年齢の名人の芸を間近で見ることが有効だろう。
また、ワインやウイスキーのようなものも、基礎的な経験の蓄積がなければ、いきなり高級品を飲んでも「なんだか、おいしいですね」というくらいの感想しか口にできないツマラナイ人になってしまう。
趣味と呼ぶかどうかは人それぞれでも、これと定めた分野での「成長する経験」への支出には意味がある。
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