名前が「エレガンス」ゲイの黒人監督の壮絶な半生 米国で人気作を続々生み出す「A24」の注目作

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そんな四面楚歌(そか)の状況の中でもフレンチは希望を捨てずに生きていく――。主演のフレンチを演じたジェレミー・ポープは本作の熱演が認められ、第80回ゴールデングローブ賞の主演男優賞(映画・ドラマ部門)にノミネートされている。

そこで今回はこの心揺さぶる実話を描きだしたエレガンス・ブラットン監督に、いかにしてその過酷な状況を乗り越え、アメリカンドリームをつかむに至ったのか。そして「人は変わることができる」と語るその心境について聞いた。

A24
気鋭の映画会社A24でデビュー作を発表したエレガンス・ブラットン監督 ©2022 Oorah Productions LLC.All Rights Reserved.

――監督のエレガンスというのはすごくいいお名前だなと思ったのですが、これは本名なんですか?

そう、本名なんです。出産のときに、赤ちゃんを泣かせるために背中をトントンとたたくことがあると思うんですけど、うちの母が僕を産んだときに、僕の振り返り方がすごくエレガントに見えたらしくて。それで母がエレガンスと名付けてくれたんです。ただしそのときは薬で意識がもうろうとしてたようなので、それでそう見えただけなのかもしれないですけどね(笑)。

母は敬虔なクリスチャンで刑務官だった

――敬虔(けいけん)なクリスチャンであり、厳格な職業である刑務官という仕事をしていたお母さまからはゲイであることを理由に家を追い出されたわけですが、その出来事とは裏腹に、監督にエレガンスという名前をつけたという事実からはお母さまからの非常に強い愛情を感じるのですが。

うちの母親というのはすごく複雑な人なんですが、ポジティブなことがとても好きな人でした。愛というものはいろんな矛盾を抱えたものだと思うんですが、彼女がエレガンスと名付けたこと自体がものすごく悲劇的な皮肉だったと言えます。

若い頃から、人前に出てエレガンスだと名乗った瞬間に、みんながなんとなく、もしかして僕のことをゲイじゃないかと思っていたようなふしがあって。結果として彼らは正しかったんですけど、そう名付けた母親自身は僕がゲイであることを受け入れられなかった。それはものすごい皮肉ですよね。

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