セブン、首都圏で「弁当チルド化」急ぐ意外な背景 フードロス削減に加え、迫りくる「危機」に対応

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大手コンビニでは、定温保存の商品について、店舗到着から20時間程度経過すると棚から撤去してしまう。それを踏まえると、配送頻度は多いほうがいい。たとえば深夜の便に朝用のおにぎりを、朝の便に昼用のおにぎりを発注すれば、よく売れる時間帯に店舗に到着して間もない商品をそろえることができる。

それが配送回数の削減によって朝の便がなくなれば、昼用のおにぎりも深夜の配送にまとめて発注する必要がある。すると、昼用のつもりで仕入れたおにぎりも、朝用と同じタイミングで消費期限を迎えてしまう。

つまり、配送回数の削減後も同じ量を発注すれば、販売期限が早く来て、廃棄せざるをえない商品が増える。それを避けるために、加盟店は発注量を減らしてしまうかもしれない。そうなればコンビニ本部や、弁当・おにぎりなどのメーカーの収益にも影響する。

「円滑な移行のため、コンビニ本部もお願いばかりではなく、消費期限の延長など、自分たちでできることをすべきではないか」。各社の対応策を見た業界関係者は、そう不安を口にする。

おにぎりでも消費期限延長を模索

セブンはすでに一部のエリアで日配品の配送頻度を1日4回から3回に減らしているが、その取り組みを順次全国に広げる計画だ。そして東京の西部で同時に取り組まれているのが、冒頭の「弁当フルチルド化」実験、つまり商品の消費期限の延長というわけだ。

チルド弁当の消費期限は製造から3~4日。販売できる期間の長いチルド弁当ならば、初日に想定より売れ残ってしまっても、翌日以降の発注を減らすことで調整できる。実際、実験を行っている多摩地域の一部エリアでは、弁当類の売り切りが増え、店舗の収益が伸びているという。

定温弁当と同様に消費期限が短いおにぎりについても、千葉県の一部エリアで期限延長に取り組んでいる。メーカーがクリーンルームのような設備に投資して製造時の衛生管理を徹底。それによって添加物を使用することなく、消費期限を約8時間伸ばすことができる。

セブンが金銭的な補助をしているわけではないが、メーカーにも利点はある。加盟店からの発注増が期待できるうえ、配送時間を長く取ることで、1つの工場からより遠くの店舗に向けた商品も製造できるようになるからだ。1工場あたりで製造する種類を削減すれば、生産性はさらに改善する。

「弁当フルチルド化」の実験を踏まえ、現在は東京の一部エリアで定温弁当を数種併売しながらチルド弁当の販売を拡充している。「首都圏全体でやろうと思えば、できる体制が整いつつある」(セブンの笠石本部長)といい、今後店舗数を拡大していく予定だ。

物流危機は店舗のバックヤードだけでなく、売り場も変えつつある。

冨永 望 東洋経済 記者

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とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

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