最高検が3つの特捜改革案を発出。図りかねる「真意」
最高検察庁の検察改革推進室は、東京地検、大阪地検、名古屋地検の3特捜部に対して、4月26日に新たな運用方針を発出した。今回の検察改革は厚生労働省の村木元局長のえん罪事件で、捜査を担当した主任検察官が証拠物であるフロッピーディスクが改ざんし、その事実を知りながらも公判を継続したことへの反省に立ったもので、大きな柱は3つ。
まずは「統括審査検察官」(以下、統括官)の設置だ。東京、大阪、名古屋の3地検のトップである各検事正は、大規模だったり複雑で立件が困難な事件だと各検事正が判断した場合、公判を担当する公判部の検察官を統括官に任命する。統括官は、公判を維持できるかを勘案しながら、すべての証拠を把握し、捜査を担当する検察官のトップである主任検察官が適正な判断を行っているかを審査する。起訴に踏み切った場合、統括官が公判を担当する主任検察官になるので、勢い、統括官は起訴に慎重にならざるを得ない、というのがこの改革案の肝。
2つめは特捜事件の公判運用について。公判部長は特捜事件の公判前整理手続きや公判手続きの経過を、特捜部長のみならず、最高検や高検の特捜係検事に報告するというもの。こうすることにより、えん罪事件での公判取り消しを迅速化する。
3つめは「取り調べ可視化」の運用要領で、2月23日に発出した「試行指針」に説明書きを加えたものだ。「指針」では、試行期間は「3月18日から当分の間」とされたが、検証は1年後がメドであること。被疑者が拒否した場合や真相解明が阻害されそうな場合には録音・録画を行わないこと。全過程の録音・録画を視野に入れて、出来る限り可視化をすることなどを指示している。
3つめの「要領」は、冒頭で、「取り調べは被疑者の供述を虚心坦懐に聞く姿勢で行わなければならないことは当然の前提である」と断言している。このことに一般論として疑問を挟む余地はない。だが、物証が少なく、また、個々の行為だけを取ってみれば違法ではないが全体として違法である大規模かつ組織的な容疑を「はじめにシナリオありき」で捜査を進める特捜事件とは相容れない表現だ。特捜部や特捜事件の性格そのものを大きく変えるつもりなのか、それとも外形のみ改革したふりをするつもりなのか--。真意を読みかねる運用方針の発出である。
(山田 雄一郎=東洋経済オンライン)
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