アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功

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ITのシステム上、ホテル比較サイトで近隣の空き部屋状況をリアルタイムで把握しながら空室在庫を分析し、1000円程度、価格をあげてプレミアムを取る。

部屋は豪華ではないが、コンパクトな部屋に大きなTVと、広く上等なベッドがあり、その上でも仕事ができるという仕様だ。徹底的にビジネスパーソンの出張に焦点を当てている。

アパホテルのホームページではロイヤルティプログラムが解説されており、ここで狙うのは「ファン化」である。

会員制度1900万人に対して平均で10%程度キャッシュバックしながら、ホテル予約サイトの宿泊料金設定は「アパ直」が最安値となるようにアパホテルが一括設定している。これによって直販サイトからの顧客流入を増やしてマージンを確保する。

独自予約サイト利用でポイント

このロイヤルティプログラムでは、「年間利用実績(泊数等)に応じて5つの会員ステータスを用意している。「レギュラー」会員は最大9%だが最高位の「プレジデント」になると最大還元率が15%となる。これらは独自予約サイト「アパ直」経由の宿泊予約でアパポイントがたまるという仕組みだ。

また、「アパ トリプルワンシステム」は、ホテル利用時スマホでアプリを使用すると「1ステップ予約」「1秒チェックイン」「1秒チェックアウト」ができる。

こと細かに顧客の使用シーンからペインを取り除いているのだ。

AIを含むITの活用とターゲット顧客に焦点を当てたビジネスモデル・イノベーションが成功の鍵である。

■ダイナミック・プライシングのリスクとアパホテルのコミュニケーション力

最後に「ダイナミック・プライシング」の解説をしておこう。

近年ではデジタル・マーケティングと相性のよいダイナミック・プライシングがさまざまな業界で活用されるようになってきた。従来、使用されていたアルゴリズムは、競合価格の監視や在庫量にあわせて価格を変動させる自動化レベルだった。

ここに数理、統計をもとに決定を補佐する「機械学習」や、AIが天気・イベントなどから需給に関連する変数をもとに収益最大化の選択肢を提示する「強化学習」が加わっている。

メリットは収益性の向上と在庫の低減にある。

一方でデメリットは、極端な価格変動を体感して「損した」「ぼったくりだ」など、顧客からの不信を生みかねず、ブランド棄損につながる可能性があることだ。

システム導入のコストも高く、解析のための人的能力が必要だし、一定量のデータ蓄積が必要で、成果が出るまでにそれなりの時間がかかることも懸念点である。

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