■全世界での値上げ方針なので、やるのは当然
「そもそもラグジュアリーブランドは値下げをすれば売上を簡単にあげることができる。でも我々はそれをやらない。そんな売り方はブランドの存在価値に背くからだ」
安易な価格プロモーションがブランドの死を招くことは身に染みていて、討議するまでもなくそのブランドですべきこと、すべきではないこと(Do’s and Don’ts)の判断基準が企業文化になっている。
これは、事業そのものへの信条の問題だろう。
サイモン・クチャー社の調査****によると、「ラグジュアリー製品の販売価格を2%引き上げると、税引前利益が9〜25%向上する(利益増加幅の差異は製品カテゴリーに依存)ことが判明しており、価格最適化による利益拡大の機会が存在する可能性は高い」という。
****「ラグジュアリー製品のプライシング 精緻なプライシング戦略がもたらす利益拡大」(山城和人、泉本みらの/サイモン・クチャー/2020年8月)
ピンチの時こそ値上げを実行
■あり得ない値上げをしても、顧客が喜んで買う理由
ディズニーランドは増税やコロナ禍など、客数が落ち込む経営環境の時こそ値上げを実行する。価格支配力を維持しているから可能なことだ。
そんな東京ディズニーランドも、世界ベースで他のディズニーアトラクションと比較すると、実は価格は世界一安い。さらに為替変動によって差は開くばかりだ。よって、今後も値上げする可能性は高いと考えられる。
ディズニーにとって、ブランドで大きな付加価値を生むことは戦略方針そのものなのだ。
2022年5月には「ディズニー・プレミアムアクセス」が導入された。これは1人2000円を支払うと、1つの人気アトラクションの待ち時間を短くして楽しめる施策だ。
支払い意欲の高い特定のターゲット向けに値上げをおこない、収益を最大化している。
ここで、「わが社はそのようなブランド企業ではないから、そうした事例には当てはまらない」と感じたら、思考停止状態と言えるだろう。どのような企業であっても、社名や商品、サービス名を登録していて、1人でもお客様がそれらを認識して選んでもらえるならば、立派なブランドだ。
つまり、そこには識別記号としてのブランドが存在する。ブランド・プロミスと呼ばれる「約束・暗黙の契約」の意味もあるはずである。あとはそれが強いか、弱いか。その間の諧調だ。
テスラ、ラグジュアリーハイブランド、ディズニーランドのいずれにとっても、強いブランドは経営の意思と構築するノウハウがないところには成立しない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら