■無線通信で車両性能を更新し続ける「プロダクト・イノベーション」
電気自動車/EV車の中でも、テスラのBEV(バッテリー式電動自動車)は内燃機関エンジンを搭載しないピュアEVだ。卓越した電池マネジメントシステムによって長距離ドライブを実現、加速性能に優れた運転性能までも提供している。
大型ディスプレイに統一されたシンプルかつ高性能なパネル操作とドライブ状況表示の顧客体験を提供していることも強みだ。運転手の負担が少ない運転支援を提供し、OTA/Over The Airの無線通信によって、日々、車両性能を更新している。
■熱狂的なファンがさらなるファンを連れてくる「コマーシャル・イノベーション」
環境意識の高い顧客や、カリスマであるイーロン・マスクを信じて自動車を購入する顧客、そして投資している個人投資家も含め、テスラはファンと交流している。
これによってコミュニティ参加者のみをイベントに招待するなどして、熱狂的なテスラファンを形成することに成功している。このファン自身が影響力を持って、元々はグリーン・コンシューマーではない周辺市場に向けて、口コミやSNSでテスラの推奨を狙う。
これが非常に効いている。
サブスクで課金収入を得る
■システムを改良し続けてサブスク化する「ビジネスモデル・イノベーション」
自動運転におけるシステムを日々性能改良し、対価として毎月の課金収入を得る、いわゆる「サブスクリプション/定額制モデル」を導入している。多くの売上はオンライン、オフラインのいずれか、または両方における顧客との直接的な売買であるD2C/Direct To Consumerによって生まれるものだ。
販売店を通さないため、価格支配力が強力である。
■おもちゃの車を創る発想「プロセス&サプライチェーン・イノベーション」
我々は巨大な鋳造機械で、おもちゃの車を創るような発想で現実の自動車を造る*。
テスラは世界に存在しなかった長さ20m、高さ7.5m、410t以上のギガプレス(巨大な鋳造装置)を製造の現場に導入した。イーロン・マスク曰く、「新しい単一パーツの鋳物デザインと、それを生産する巨大な機械により、テスラ社の車体生産部門を30%縮小できる」という。
モデル3の組み立て作業工程の中にある、70のスタンピング・押出成形・鋳造を、モデルYではギガプレスにより鋳造される1つのパーツで代替する。つまり、通常メーカーが100以上の部品で構成するものを3つの部品で完成させることになる。
2022年に竣工した新工場ギガテキサスでは車載バッテリーから車体の製造、組み立てまでの工程を同じ工場内で実施し、一貫生産**している。これらのイノベーションで車重の軽量化、部品点数低減、製造時間短縮、部品運搬の無駄の排除が可能になった。
従来の自動車製造業にとって、まさにゲームチェンジャーだ。
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