膨大な数の系列部品メーカーと協創してきたオールドプレーヤーには、このような系列切りを伴うイノベーションは実行が困難だ。まさにイノベーションのジレンマが、彼らに襲いかかる。
**『テスラの新工場「ギガテキサス」 その恐るべき実力』(日本経済新聞/2022年5月10日)
■世界中の俊英が集い、世界を変えたい強固な意志に共鳴する「組織イノベーション」
テスラには「称賛に値する電気自動車を一般市場にいち早く導入することで、世界での持続可能な輸送手段の到来を加速する」というミッションがある。
これが、2021年の時点で既に「世界を持続可能なエネルギー社会へと加速する/Accelerating World’sTransition to Sustainable Energy」と、対象をエネルギー分野にまで広げており、人類にとってより重要な課題設定になっている。
このミッションに意気を感じる世界中の俊英が集い、世界を変えたい強固な意志を持つイーロン・マスクの過激なまでの働きぶりと、それを同じように従業員全員に要求する企業文化がテスラの成長を支えている。
2桁の値上げをしたハイブランド
■値下げをすれば売上を簡単に上げられるとしても、絶対にやらない
ここで少し切り口を変えて、「ブランド」について見ていこう。
テスラとは業界や商材は異なるが、価格支配力を有しているラグジュアリー製品とディズニーランドを例に挙げる。コロナショックではラグジュアリー製品も、旅行者の消失や店舗の封鎖によって消費が陰り、売上が低迷した。
しかし現在、上流層は海外旅行再開から消費拡大が進み、財布はハイブランドへと向かった。コロナショックは製造個数にも制限が出たからか、シャネル、カルティエ、ティファニーなども、製品によりけりではあるものの世界レベルで2桁もの値上げをしている。
しかも日本は、円安の影響を大きく受けたことによって、10%の値上げが数万円から数十万円の変動インパクトがある。たとえばシャネルのバッグといえば「マトラッセ」がもっとも有名、かつブランドのアイコンだが、商品によっては過去2年間で50万円以上もの値上げとなっており、こうした実情について、コロナ禍を経た2022年末時点での時価総額増加ランキングにもとづいて日経新聞が報じていた。
欧州では高級ブランドの躍進が目立った。
増加額2位の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは、緩和マネーの流入で資産が膨らんだ富裕層を引き付け、コロナの行動規制が緩和されて以降は中間層の「リベンジ消費」も取り込んだ。
高級ブランドでは4位に仏エルメス、10位に仏クリスチャン・ディオールが入った。インフレ下で消費者が支出先を絞り込む中で、「消費意欲を誘うブランド訴求力の高さから需要が落ちにくい」(ニッセイアセットマネジメントの三国公靖・上席運用部長)***
ラグジュアリー製品やハイブランドのブランドマネージャーにヒアリングしてみると「自分たちのブランド・バリューはこういうもので、だから値上げをするんだ」という確固たる考え方があるようで、次のようなことを仰っていた。
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