東日本大震災の復興財源に消費税が浮上、与野党内で高まる不満
震災の復旧・復興予算をめぐる与野党の攻防の焦点は、第2次補正予算以降の財源問題に移ってきた。
議論の口火を切ったのが、民主党の岡田克也幹事長。4月18日の会見で、2次補正以降の財源として「復興再生債」(仮称)を発行し、従来の国債と区別して管理。償還財源もきちんと担保・確保する考えを明らかにした。加えて、償還財源の中身は「基本は税。(増税の)タイミングと、規模と、どのような税でやるかはこれからの議論」と述べ、増税を検討する姿勢を明確にした。
4月19日には、民主党の政策調査会長を兼ねる玄葉光一郎国家戦略相が「現時点では増税は私の頭の中にない」としつつ、「(償還財源は)さまざまな税目があるし、その組み合わせだってありうるかもしれない」と発言。枝野幸男官房長官も「民主党において、さまざまな検討をしているということは報告を受けて承知している」と述べ、増税に向けた地ならしが始まった。
震災によるインフラなどの毀損額は内閣府試算によると、16兆~25兆円。本格的な公共工事を伴う復興予算は2次補正以降になる。予算規模は10兆円ともされ、歳出削減だけで賄うことは困難。国債増発と増税は不可避の情勢だ。
問題は、どういう方法で増税するかだ。新聞各紙の世論調査では、増税を容認する意見が過半数を超えている。菅直人首相のブレーンである小野善康・内閣府経済社会総合研究所長は「みんなで震災の被害を分かち合うので、消費税がよい」としている。ただその場合、被災地だけ税率を軽減できるのか、という技術的な難問が待ち受ける。
身内からも異論噴出
さらに、民主党を取り巻く政治環境は盤石と言いがたい。野党は消費税増税に反対しているうえ、民主党内にも不穏な空気が漂う。
4月19日に開かれた税制改正プロジェクトチームの会合では、所属議員から「4月24日の統一地方選挙に向かって消費税増税を出されたら、街頭演説する人は石を投げられる」「今、消費税を上げたらたいへんなことになる。上のほうで決めても国会で堂々と反対していく」などと異論が噴出。国会での採決で造反議員が出るのでは、との観測もくすぶる。
一方で増税ペースが急激すぎると、景気を冷え込ませるおそれがある。野田佳彦財務相は「2次補正の財源確保の仕方が財政健全化の道筋と整合的であるかを、海外、マーケットも注視している」と牽制するが、2次補正成立までの道のりは険しそうだ。
(週刊東洋経済2011年4月30日−5月7日合併号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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