リフターのグレードはボディの長短を問わず「GT」のみで、インパネ、ドアトリム、センターコンソール、シートのステッチなどにブラウンをあしらっており、チェックのファブリックシートともども大人っぽい雰囲気だ。
リフターおよびベルランゴのシャイン以上の標準ボディには、センターにスケルトン仕立てのトレーが貫く個性的なガラスルーフがつき、リアにも上着などを入れるのに便利なシーリングボックスが備わる。ドブロでは得られない仕掛けだ。
シートアレンジは3車共通で、標準ボディでは助手席と3分割の後席が背もたれを前に倒すと座面が沈み込み、低く畳める。マキシあるいはロングの3列目は、左右独立の取り外し式だ。頻繁に脱着するのは大変だろうが、使わないときに場所を取らないという利点もある。
「個性を大事にする」クルマづくり
パワーユニットは3車共通で、130ps/300Nmを発生する1.5リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンに、トルコン式8速ATの組み合わせ。ただし、標準ボディで比べると、ベルランゴはドブロの40kg増し、リフターはベルランゴの50kg増しなので、ドブロがもっとも走りに活気がある。
そう感じさせるもう1つの要素に、遮音性がある。某誌の取材で比較したとき、ドブロだけ少しだけにぎやかなので調べてみると、ドアのウェザーストリップの長さがリフターやベルランゴと違っていた。軽量化だけでなく、フィアットらしさの演出を考えた結果かもしれない。
乗り心地とハンドリングは、それぞれ数台を乗った経験から言えば、ドブロとベルランゴは似ていて、どちらもシトロエンらしい。つまり、ドブロはフィアットとして見れば、すべての動きが鷹揚(おうよう)だ。でも、標準ボディにおける凝ったガラスルーフの有無の差はあって、ドブロのほうが身のこなしは軽快で、コーナーでのロールは控えめだった。
リフターは他の2台とは一線を画していて、小径ステアリングはクイックな反応を示すし、サスペンションはやや固め。ゆえに車高の高さからくる不安感もなく、全体的に重厚なフィーリングだ。
このように、同じ基本設計を有するステランティスのMPV3姉妹は、実際はデザインだけでなく乗り味にも少しずつ違いがある。しかも、それがフィアット、シトロエン、プジョーというブランドイメージに合致している。個性を大事にするヨーロッパのクルマづくりは、こういう成り立ちのクルマであっても健在なのである。
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