月9「真夏のシンデレラ」はただイタいドラマなのか 「古い」「ダサい」酷評だらけのスタートだが…

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昭和の時代から夏は四季の中で最も季節性の高い作品が放送されてきた経緯があるだけに、これほど夏に特化した「真夏のシンデレラ」は、希少かつ貴重な存在。逆にこの作品がなければ「本当の意味での夏ドラマは絶滅してしまう」という感すらあるのです。

今や「バチバチの三角関係」は少数派

批判的な声があっても「真夏のシンデレラ」から目が離せない2つ目の要素は、あえてかつて王道だった直球のラブストーリーが選ばれたこと。

ラブストーリーとしてのベースは、タイトル通りの「シンデレラ」。主人公の夏海は、家族思いの心優しい女性で、一方の健人は裕福な家庭で生まれた優等生タイプの好青年であり、シンデレラと王子の関係性に似ています。また、第1話の終盤に「健人が夏海にサンダルをプレゼントして履かせてあげる」というガラスの靴を彷彿させるシーンもありました。

シンデレラというクラシックな設定に加えて、夏海の幼なじみであり想いを寄せる牧野匠(神尾楓珠)との三角関係やバチバチのバトルを真っ向から描いていることもポイントの1つ。

近年は三角関係やライバルとのバトルを描かないシンプルなラブストーリーが主流になっていました。制作サイドがその傾向を知らないはずがなく、あえてかつて王道だった形を選んだ様子がうかがえます。主に若年層の視聴者から「古いけど新しさも感じる」というニュアンスの反応が見られるのは、三角関係やバチバチのバトルを真っ向から描いているからでしょう。

今夏ゴールデン・プライム帯で放送されているラブストーリーは、男性の恋愛ベタな理由をフィーチャーした「こっち向いてよ向井くん」(日本テレビ系)のみ。深夜帯では、初恋相手と偽りの結婚生活をはじめる「ウソ婚」(関西テレビ・フジテレビ系)、ストーカーとの危険な恋を描いた「癒やしのお隣さんには秘密がある」(日本テレビ系)、軽度の知的障害を持つ主人公にスポットを当てた「初恋、ざらり」(テレビ東京系)が放送されています。

いずれも直球というよりは変化球のような設定が選ばれたことがわかるのではないでしょうか。その点、特別な設定ではなく普通の男女の恋を描く「真夏のシンデレラ」は、やはり希少価値が高い作品なのです。

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