「できる範囲でやってます」上司が悩む若手の一言 「辞められると困るから強く言えない」課長の末路
「Z世代にはコーチングが効かない」
課長は、そう決めつけてしまった。
「頭ごなしに叱りつけてもいけないし、だからといってコーチングもダメなら、どうしたらいいかわからない」
と頭を抱えていたという。
上司たちに根本的に足りないもの
この課長の元上司に話を聞いたとき、私はすぐにこう問いかけた。
「その課長さんは、自分が期待していた基準を部下たちに伝えていたのでしょうか?」
と。
元上司の部長は、「よくわからない」と言った。苦虫を嚙み潰したような表情だった。
今度は、陸上競技の練習でたとえてみたい。
「400メートルトラックを走れ」
と言われ、10周走ったら、
「誰が10周でいいと言った? もっと走れ」
と言われたらどうだろうか? 誰だってイラつくのではないか。最初から
「20周走れ」
と言われたら問題がなかったに違いない。
なぜ、こうなるのか?
理由は簡単だ。この課長も、そのように教えられなかったからだ。だから、元上司の部長も、「期待した基準を伝えていたのか?」という私の質問に対し、怪訝な表情をしていた。
仕事には「あり方」と「やり方」がある。あり方は目標だ。ゴールである。例えば売り上げ目標や利益目標、時間外労働の上限時間だったらわかりやすいだろう。
数字で表現するのが、容易だからだ。
一方、「料理の美味しさ」や、「部長が満足するような企画書」「お客様がその気になってくれる提案書」といったものは曖昧だ。
どこが「あるべき姿」なのか、基準がハッキリしない。こういう場合は、レシピのような「やり方」を言語化する必要がある。
その「やり方」をしっかり守ってもらい、「あり方」に近付くまでフィードバックを繰り返す。
このように、まず前提として「あり方」も「やり方」もしっかりと、丁寧に伝えるべきなのだ。それをしてもいないのに、厳しいも優しいもない。
さらに言えば、何も教えられてもいないのに、コーチングで習った質問を投げかけても、部下たちは困るいっぽうなのだ。
大事なことは、前提を揃えることだ。仕事を依頼する「前」に、もっと意識を向ける必要がある。
どこまでの仕事をしたらOKなのか。そのための仕事のやり方はどんなものがあるのか。それを言葉にして、事前に伝えておくこと。
「とりあえず、やってくれないか」という曖昧な指示はやめよう。私はこれを昔から「とりあえず依頼」と名付けている。
「とりあえずビール!」
というような感覚で、部下に仕事を投げると、部下も「とりあえず、やってみます」と口ぐせのように応える。こういう悪癖が根付くと、会話効率はドンドン悪くなる。
「とりあえず依頼」して、部下が期待通りの仕事をすることは少ないからだ。だから上司は部下にダメだしを繰り返すことになる。
上司たちが、優しくしたらいいのか、厳しくしたらいいのかばかりを気にするのは、「ダメだし」ばかりしているからだ。
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