「デフレ脱却」できないことが日本経済を救う皮肉 家計も企業もアフターコロナ回復は早くも失速

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この背景には、コストプッシュ型のインフレが一巡していることがある。日本国内でも、ディスインフレが進めば実質賃金は増加することになり、個人消費を下支えすることになるだろう。

「ディスインフレ」が景気を支える構図は、「デフレ脱却」という観点からは望ましいこととは言えない。しかし、日本は人口動態などの観点から内需に大きな変化が生じにくいため、構造的にこのような動きが生じやすい。

具体的には、以下のメカニズムである。

世界経済の回復局面
海外経済の回復 ⇒ 原材料高・ドル高円安 ⇒ 日本の交易条件悪化 ⇒ 日本の総所得減少(伸び悩み) ⇒ 実質賃金の低迷 ⇒ 内需低迷

 

世界経済の悪化局面
海外経済の悪化 ⇒ 原材料安・ドル安円高 ⇒ 日本の交易条件改善 ⇒ 日本の総所得増加(下支え) ⇒ 実質賃金の改善 ⇒ 内需改善

いずれも世界経済の変動とは逆方向のベクトルであり、日本経済の安定化につながっているため、決して悪いことではない。だが、世界経済の回復局面では世界経済の動きに遅れているように見えてしまう点は否めない。

また、世界経済の悪化局面ではディスインフレ(またはデフレ)によって実質賃金が改善することになるため、ディスインフレが好感されやすい。

今後、世界経済は緩やかに悪化局面に入っていくことが予想される。通常のパターンであれば、ディスインフレによって日本経済が下支えされることになる。

メリハリを重視する家計

5月の家計調査では、旅行・外食関連などサービス消費はある程度堅調だったが、耐久財消費を中心に消費全体は冴えなかった。

家計調査

家計は「サービス消費>財消費」という傾向を強め、メリハリ消費を重視しているとみられるが、コストプッシュ型のインフレによって実質賃金の減少が続く中、トータルでは消費が抑制されている。

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