香港の小売業が思わぬ苦況に直面している。2023年2月に香港と中国本土の間の往来が(ゼロコロナ政策の緩和により)正常化された時、香港の小売業界は景気の急回復を予想していた。ところが、その後の状況は期待値を大きく下回っているのだ。
最新の小売り統計によれば、2023年1月から5月までの香港の小売業売上高は累計1719億4000万香港ドル(約3兆1679億円)にとどまった。この数字は、新型コロナウイルス流行前の2019年の同期間(2060億6000万香港ドル=約3兆7965億円)より17%も低い。
背景には、中国本土から香港を訪れる観光客数の回復が遅れていることや、観光客の行動パターンが「買い物一辺倒」から「旅の過程を深く楽しむ」方向へ変化していることがあると見られている。
「人民元安・香港ドル高」も逆風に
それだけではない。往来の正常化後、香港から中国本土や海外に“越境”して消費を楽しむ香港人が急増し、中国本土からの香港入境者数をはるかに上回る状況になっている。
香港政府の出入境管理当局のデータによれば、イースターの連休があった2023年4月に香港を出境した香港人は延べ635万7000人と、同月の域外からの入境者数(289万2000人)の2倍以上に上った。その影響で、本来なら香港で生じたはずの消費の一部が域外に流出している格好だ。
出境者数の増加の裏には、(新型コロナ対策の厳しい防疫措置により)約3年にわたって抑制されていた旅行需要が一挙に解き放たれたことに加えて、為替レートの「人民元安・香港ドル高」の進行がある。多くの香港人にとって、中国本土に足を伸ばして外食やマッサージなどを楽しむほうが(香港で同様の消費をするより)買い得感が大きいのが実態だ。
(訳注:香港ドルは為替レートを米ドルに連動させるペッグ制を採用している。そのため、人民元の対米ドルレートが下落すると、香港ドルに対しても人民元安となる)
(財新 駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は7月7日
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