──この本を書いた目的だが、外交政策について新しい考え方を採用するよう米政府に促したかったのか。それとも米国が衰退している国ではないことを同盟国や潜在的な敵国に示したかったのか。
両方だ。私はあの本を学術的に価値あるものにしようとして、脚注と参考文献を付した。世界における米国の役割について心配している、米国や外国の人たちに向けて書いたものだ。
──米国の外交政策の一般的な傾向について教えてほしい。ブッシュ政権は非常に干渉主義的で、オバマ政権はそれと比較して退いているようにみえる。
米国の外交政策には「非妥協主義」である時期と、退いている時期がある。後退することは「孤立政策」とは違う。後退は戦略的な目標と手段の調整を行う時期だ。アイゼンハワー大統領は退いた政策をとり、オバマ大統領はアイゼンハワーの政策を思わせるものがある。対照的にブッシュ大統領は非妥協主義者だった。私は、非妥協主義は退く政策より深刻な問題を引き起こすことが多いと主張する者だ。しかし、退きすぎも問題になり得るため、それを心配している。
例えば、「海洋法に関する国際連合条約」の批准を拒否するうえで米国の議会が果たした役割をみてほしい。議会は国際通貨基金における新興国の出資割当額を上げるという、すでに達成されていた合意を推し進めることを拒否した。愚かな判断であり、世界における米国の立場を損なうものだ。
こうした全般的な議論に加えて、具体的な地域について検討することが重要だ。アジアや欧州はもちろん、中南米やアフリカで退くことも米国にとって賢明ではない。
中東への関与は抑制しなければならない
しかし、中東の場合、さまざまな種類の変革の時期がこれから訪れる。いわゆる「オスマン帝国の行政区画」で現在起こっているように、ある国では国境が変わることになるだろう。宗教的な対立もますます増える。アラブの春で起こったように、近代化の遅れに対する民衆の不満が顕在化するに違いない。
こういった種類の変革はすぐには終わらない。状況はフランス革命に少し似ている。フランス革命は1789年に始まって、ウィーン会議により表面的な安定が欧州で回復したのは25年後の1815年のことだ。このような状況において外部から介入して出来事をコントロールしようとするのは、状況を良くするより悪くすることの方が多い。プロイセン、オーストリアおよび英国はフランスの出来事をコントロールしようとして、そのことに気づいた。
米国は中東について、変わっていく協力国をどう利用するかを学び、可能な場合、働きかけを行う必要がある。しかし、変革をコントロールすることは、米国の能力でも、他のどんな中東以外の国の能力でも不可能なことを受け入れなくてはならない。中東に関しては、変革の影響を抑制する観点から政策を考えることが必要だ。
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