吉本興業、「グローカル戦略」は儲かりまっか? 地方と海外の"2正面作戦"で狙う新展開

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問題は、収益を確保できるかという点となる。クールジャパン機構側は「普通の投資ファンドより収益化には時間がかかると思うが、目先の収益ではなく将来の規模拡大を見据えることが重要」(橋本氏)と中長期で成功を見守る。

CSRからビジネスに軸足

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沖縄花月には「沖縄おもろおばけ屋敷」が併設されている

一方、地方でも手を抜かないのが、よしもとの矜持だ。住みます芸人だけなく、地方活性化のためにさまざまな展開を行っている。その中心が、地方のよしもと花月の相次ぐオープンだ。

これまで大阪・なんばグランド花月を筆頭に、関西や東京に劇場を展開してきたが、2014年7月に「沼津ラクーンよしもと劇場」(静岡県沼津市)、「大宮ラクーンよしもと劇場」(さいたま市)を相次ぎオープンさせた。それぞれ、西武沼津店、大宮ロフトの後継複合施設のテナントとして入居。今年3月には沖縄三越の跡地の後継テナントの1つとして沖縄花月をオープンさせている。

この沖縄花月では、現役のお笑い芸人がお化け役をするお化け屋敷「沖縄おもろおばけ屋敷」も始めている。これが好評で、最大1時間半以上の待ち時間ができる人気スポットとなっている。「お化け屋敷は言語を問わない。世界展開も可能」と、吉本興業の幹部は海外進出の手ごたえを感じていた。

7回目に達する沖縄国際映画祭は、沖縄にとって春の風物詩になっている。地域貢献とともに、海外にも目を向けたイベントを実施し、海外から取材陣が多く訪れる催しにもなっている。また「沖縄エンタメビレッジ構想」を掲げ、沖縄発のエンターテインメント人材の育成も目指す。海外(グローバル)と地方(ローカル)の両方で事業を展開する「グローカル戦略」が徐々に実を結びつつある。

「よしもとの社員やタレントの一人が地域のコミュニティへの参加していき場を作る。その場を大きく広げて日本、アジアに広げていきたい」。5年前の東洋経済のインタビューで大崎洋社長が話した言葉だ。当初はCSR(企業の社会的責任)的な要素が強かったが、徐々にビジネス面での成果が上がってきた。地域から世界へ。笑いの裏側に少しずつ根を張る、よしもとの戦略が芽を出しつつある。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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