安倍氏を死後「神格化」自民劣化という悲惨な実態 岸田首相、「遺言の呪縛」意識も"分裂"に期待?
5人衆の中では年長の高木氏は、13日に国会内で記者団に「100人規模の派閥を引っ張っていくには1人(の会長)よりも5人で運営していく方がいい」と語り、新体制決定も「早いほうがいい」と早期決着に意欲を示した。
これに先立ち世耕氏も11日の記者会見で「なかなか総力戦で1人に決めることはできない。過去に中川秀直、町村信孝、谷川秀善3先生による共同代表世話人というケースもあった」と指摘した。
一方、「党内では安倍派新会長の本命」(党幹部)と評されている萩生田氏は12日、訪問先のラオス・ビエンチャンで記者団に対し「会長人事を含め、1日も早く新しい体制をつくることが望ましい。(集団指導体制への移行も)5人による体制を今後も続けていきたいと要望しているわけではない」と暫定的措置との認識を強調。そのうえで「肩書にこだわらず、汗を流したい」と思わせぶりに語った。
「3度目」にらみ後継者を育成しなかった故安倍氏
そもそも、今回のような後継者選びの混迷を招いたのは、故安倍氏が「3度目の登板を狙って、後継者育成をしなかったのが原因」(自民長老)との見方が多い。しかも、「安倍派内にはもともと親安倍、反安倍、中間派の3グループがあり、抑え役だった安倍氏の死去で、派内対立が顕在化したのは当然」との指摘もある。
これに関連して、派閥脱会後も安倍氏側近を自任し、2021年の自民党総裁選に安倍氏の後押しで出馬、岸田首相に迫る得票で2位となった高市早苗経済安保相は、「命日」後の11日の記者会見で、「安倍総理は官房副長官、官房長官、幹事長も務められたうえで総理大臣を8年8カ月もお務めになった。今の時点で同じだけの経験を積んだ人は(安倍派内に)いない」と語った。
一方、こうした状況について、岸田首相や麻生副総裁、茂木幹事長ら政権最高幹部は「高みの見物を決め込んでいる」(党執行部)とみられている。特に、解散権と人事権を握る岸田首相は周辺に「安倍派の結束が乱れ、党内での影響力が低下すれば、安倍派閣僚の差し替え人事もやりやすくなる」(岸田派幹部)と安倍派分裂を期待するような本音もにじませているとされる。
自民党内での今夏の最大の関心事は当然、党・内閣人事の時期と内容だ。これについても岸田首相周辺からは「安倍派の動向が定まるのを待って決めるが、首相が重視する首脳外交日程も踏まえると、9月下旬の国連総会出席の前後となることは確実」(官邸筋)との見方が流されている。合わせて、早期解散断行の可能性についても「マイナカード問題で支持率低下が続いており、今年中の解散などありえない」(同)との解散先送り論も強まっている。
安倍派は20日に幹事会や総会を開き、後継体制問題の決着を目指す構え。ただ、「誰が会長に選ばれても、必ず派を割る動きが出る。後継会長決定イコール派分裂だ」(有力議員)との見方も少なくない。どうやら「帳尻合わせのようないびつな集団指導体制で急場をしのぎ、解散時期をにらみながら時間を稼ぐしかない」(同)のが巨大派閥の実態のようだ。
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