安倍氏を死後「神格化」自民劣化という悲惨な実態 岸田首相、「遺言の呪縛」意識も"分裂"に期待?

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これに対し、昭恵夫人が「この1年あっという間でした。これまで泣いてる余裕がなかったが、主人と過ごした日々を1日1日、思い出す余裕ができて、今は涙が出る」と目を真っ赤にして感極まった表情で安倍氏を失った心境を吐露。

さらに、地元・山口県の幕末の思想家・吉田松陰を引き合いに、「松陰の名前が後世に広く知られるようになったのは、松陰の死後、門下生が日本のために活躍したからだ。安倍晋三の名前が100年後も200年後も記憶されるよう、国のために活躍していただければ、主人も喜ぶのではないか」と居並ぶ議員らに訴え、会場内にすすり泣きも聞こえるという感動的な場面となった。

また、法要後は同じ場所で一般向け献花が行われ、約5000人(自民党調べ)が訪れ、花束を献花台に手向けて故人を偲んだ。献花台の周りには生前の安倍氏の笑顔の写真が並べられ、多くの人がスマートフォンで撮影していたという。

「100人派閥」の後継体制めぐり対立激化

「命日」の法要で、故安倍氏の追悼は一区切りとなったが、自民党内では「政局運営での『ポスト安倍の構図』はまだまだ見えてこない」(閣僚経験者)のが実態だ。特に、安倍氏死去後も所属議員が増加し、100人の巨大派閥となっている安倍派の後継会長をめぐる派内対立が、党内権力闘争の混乱にもつながっている。

安倍氏死去以来、安倍派は会長を空席とし、会長代理の塩谷立元文科相、下村博文元政調会長を中心とするベテラン中心の集団指導体制を続けてきた。これに対し、派内からは「このままでは、目前に迫る党・内閣人事や次期衆院選に派として対応できない」(若手)と早期の新体制づくりを求める声が噴出。派幹部も「命日」を区切りとして新会長選出に動き始めていた。

そうした中、派内で将来の総理総裁を目指す立場の萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相に、世耕弘成参院幹事長、松野博一官房長官、高木毅国会対策委員長を加えたいわゆる「5人衆」が6月末の会合で、「命日以降は党内の要職で活動している『5人衆』による集団運営体制に移行する」との方針を確認した。

しかし、塩谷、下村両氏らベテラン組は「世代交代を名目とした5人衆のクーデターだ」と猛反発。後継会長になお強い意欲を持つ下村氏が「派幹事会や総会での全員討議で決着をつけるべきだ」と息巻く一方、5人衆もそれぞれの立場から発言し、派内対立は「収拾困難な状態」(若手)に陥った。

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