過去最高益!トヨタが伝承する「仕事哲学」 人を責めずに、仕組みを責めよ
ある部品メーカーに、お邪魔した時のエピソードです。その現場では非常に多くの在庫があり、通路も複雑に曲がりくねっていました。そんな中で、鮮やかなハンドルさばきでフォークリフトを操る運転手がいました。彼を見た管理監督者は、自慢げにこのように言いました。
「彼はすごいでしょ?こんな運転しづらい現場でも、常にペースを落とさずにフォークリフトを操れるんですよ」
しかし、彼は荷物を右から左に動かしているだけで、付加価値はゼロ。在庫を圧縮できれば、運搬作業自体もなくすことができます。
トヨタでは、「動く」と「働く」は全く別のものとされています。「動く」は物理的に動作をしているだけで、そこに付加価値が加わって初めて「働く」になります。この定義でいうと、フォークリフトの運転手の行動は、「動き」であって「働き」ではありません。
みなさんの周りの忙しく仕事をしている人も、実は「動い」ているだけで「働い」ていないかもしれません。
「品質は工程で作りこむ」
次は、このような場面をイメージしてください。みなさんは、あるメーカーの営業担当。昨年入社した若手Aさんも、すっかり業務に慣れました。教育担当しても安心していられるようになってきたなと感じていたある日のこと。Aさんが工場への発注を間違えてしまい、数百万円の損失が発生してしまいました。ミスの内容は、発注する製品を間違えるという非常に初歩的なものでした。
Aさんに理由を尋ねたところ、「業務への慣れもあって、発注内容の確認を怠ってしまった」とのこと。お客様には注文した製品が届かず、工場には不要な在庫が生まれ、大いに迷惑をかけてしまいました――。
程度の差はともかく、みなさんご自身にもこのようなご経験はありませんか?つまり、ちょっとしたチェックを怠ったために、みなさんの後工程(お客様や他部署)や組織に悪影響を及ぼしてしまった経験です。このように、個々人が担当業務の品質を担保できなければ、周囲に大きな悪影響を及ぼします。
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