京都銀行の会長人事、薄氷の株主賛成率6割の真因 好業績でもガバナンスが不適なら「クビ」?

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土井氏の賛成率低下は、今年に始まったことではない。2020年の株主総会では91%の賛成率を集めたが、以来毎年10%のペースで下がっている。回復基調にある業績とは対照的だ。

賛成率が下げ止まらない背景には、2つの要因が考えられる。1つは、機関投資家が求めるガバナンス水準が高まっていることだ。

日興アセットマネジメントは、2022年2月に議決権行使のガイドラインを改定した。同社の独立性基準を満たす社外取締役が取締役総数の3分の1以上選任されない場合、経営トップの人事に反対票を投じる規定を新たに設けた。

2021年は社外取締役の植木氏に反対票を投じる一方、土井氏には賛成していた。ところが、2022年はガイドラインの改定によって、社外取締役の充足率が下回ったこと理由に、土井氏にも反対票を投じるようになった。

もう1つは、地銀に対する「温情」が廃止されつつあることだ。

三井住友DSアセットマネジメントは、2020年および2021年の総会では「業界動向を考慮」し、京都銀の会社提案にすべて賛成している。ところが、2022年にはROEの低迷を理由に株主総会で土井氏に反対票を投じた。京都銀のROEは、2021年と2022年で大きく変わっていない。

同社の広報担当者は「地銀に対しては低金利環境を考慮し、2020~2021年はROEの水準が抵触していても賛成票を投じた」と説明する。2022年からは、京都銀など一部の地銀に対して特殊事情を廃止し、ガイドライン通りに賛否を下した。

議決権行使は過渡期にある

「取締役の過半数は独立していなければならない」。2022年まではすべての会社提案に賛成していたノルウェー政府年金基金は、2023年は土井氏にのみ反対した。国内の機関投資家の中でも、社外取締役の充足率を現在の3分の1から過半数へと引き上げを検討する動きがみられる。

2022年の総会において、京都銀の人事に反対票を投じた機関投資家の関係者は「議決権行使の方針は過渡期にある。今後も厳格化していくだろう」と指摘する。京都銀の賛成率をめぐる騒動は、機関投資家が求めるガバナンスの要求水準が、年々高まっている光景を象徴している。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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