京都銀行の会長人事、薄氷の株主賛成率6割の真因 好業績でもガバナンスが不適なら「クビ」?

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ROEの低さには、京都銀固有の事情もある。前述の政策保有株が生み出す評価益だ。2023年3月末時点で、同社の貸借対照表にはその他有価証券評価差額金が5000億円計上されている。

皮肉にも、潤沢な評価益こそが京都銀のROEを押し下げている主因だ。ROEの分母には、株主資本と評価差額金を合算した数値が採用されるためだ。京都銀は評価差額金を控除した「株主資本ROE」を経営指標として重視しており、その場合の数値は5.6%にまで高まる。ROEの解釈をめぐる会社と投資家の溝が埋まらなければ、トップ人事に反対票が集まり続ける。

社外取締役「独立性」の微妙なライン

さらに、反対理由として目立つのは、2021年の総会後に社外取締役に就任した植木英次氏の独立性だ。植木氏はNTTデータの副社長を経て、現在は子会社の社長を務めている。NTTデータは京都銀の株式を保有するほか、京都銀の基幹システムもNTTデータ製だ。

植木氏はNTTデータ自体の役職からはすでに離れており、京都銀は2023年の招集通知において、NTTデータとの取引額は「直近事業年度の連結業務粗利益の1%未満」にとどまるとアピールしている。利害関係者にあたるかは微妙なラインで、植木氏の独立性の判断は機関投資家の間でも分かれている。

植木氏への反対票は、めぐりめぐってトップ人事への反対票へと繋がる。京都銀は取締役9人のうち、社外取締役が3人を占める。国内の機関投資家は取締役総数の3分の1以上を社外取締役を選任することを求めており、それを下回ればトップ人事に反対票を投じる。植木氏の独立性を否定すれば、独立社外取締役が3分の1を下回ることになり、土井氏にも反対票が投じられてしまうのだ。

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