主役の体は「別人」ハリウッドでよくある撮影手法 筋書きすら知らされない「ボディダブル」の存在
ロンドンのワーナー・ブラザース・スタジオで、バービーのタイトなピンクのジャンプスーツから着替えたちょうどその時、エマ・イーストウッドは彼女のそれまでの人生で最も注目される役を射止めたことを知った。バービーの「ボディダブル(代役)」だ。
知らせは、イーストウッドがその役のオーディションを受けたほんの数時間後に、グレタ・ガーウィグの新作映画のキャスティング・ディレクターの1人からショートメッセージで届いた。エキストラ出演のオファーを2度取り消されて以来、彼女はあまり期待しないようにしていたと言う。
初めての「ボディダブル」
「自分の不運は続くのだ、とすっかり思い込んでいた」とイーストウッド。
サンフランシスコで育ち、現在はロンドンに住む26歳のイーストウッドは、これまで主にコマーシャル、ミュージックビデオ、短編映画に出演していた。ボディダブルの仕事をするのは、今回の『バービー』が初めてだった。
不安な気持ちは撮影初日にすっかり和らいだ。イーストウッドは日の出前に起き、午前6時にはミニバスに乗ってスタジオに向かっていた。
「最初の数日は、ちょっとしたスター待遇だった」。そのときセットにはごく少人数しかおらず、自分はその1人だったとイーストウッドは振り返った。「本当に甘やかされた気分だった」と言う彼女は、自分専用のトレーラーがあったのには驚いたと付け加えた。