主役の体は「別人」ハリウッドでよくある撮影手法 筋書きすら知らされない「ボディダブル」の存在
キャスティングの世界では、俳優があるシーンを撮影できない、あるいは撮影したくない場合にボディダブルが雇われるが、制作チームが時間と資金を節約するために代役を使う場合もある。
「マーゴット・ロビーを照明テストのためにセットに座らせるなんてことはしない。同じサイズ、身長、肌や髪の色の人を選ぶんです」。『バービー』にはかかわっていないキャスティング・ディレクターのリズ・ルイスはそう解説する。
イーストウッドは当初、主人公バービー役のロビーの手だけを演じるハンドダブルとして起用されたが、結局、顔以外の全身が映る、より本格的なシーンも担当することになった。
内容がわからないまま進むパラレル撮影
「何をするのか、細かく知らされることはなかった」とイーストウッドは言う。「出演者全員が顔を揃える重要な日だと言われたことは何回かあったけれど、撮影現場に行く前に、何をするのか詳しく教えてくれたことは実際、一度もなかった」。
イーストウッドの大きな目標は、別の映画でもロビーのボディダブルを務められるようロビーと親しくなることだった。ところが、2人が同じ場所にいることはあまりなかった。イーストウッドがある場所で自分のシーンを撮影しているときには、ロビーは別の場所で撮影していることが多かったからだ。
イーストウッドは自分の仕事に自信を感じている。イーストウッドによれば、現場の人々はしばしば彼女をロビーと見間違えたという。ロビー本人も含めて、だ。ロビーは映像を見返しながら、自分かと思ってしまうところもあった、とイーストウッドに言った。
スケジュールは合わなかったものの、ふたりのサイズはぴったり合っていた。イーストウッドが着た衣装はすべて、ロビーが身につけたものだった。「私のために特別に作ったものは何もなかった」とイーストウッドは言う。