米国株高の中で見逃される「重要な事象」とは何か 警戒すべきなのは「金利引き上げ」だけではない

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パウエル議長会見時の報道陣とのやり取りを聞いていても、どこかチグハグな内容のものが多かった。

パウエル議長は前述した経済見通しと実際の金融政策との矛盾を取り繕うことに追われ、方針を正確に市場に伝えるだけの余裕がなかったような印象を受けた。

「インフレは一時的な要因によるもの」とかたくなに言い張り、必要以上に緩和策を進めていた2021年前半までや、4会合連続で0.75%の大幅利上げを実施、性急な利上げで市場を驚かせた2022年でも、その方針の是非は別として、少なくとも当局が何をしたいのかは明確に伝わっていた。今回はパウエル議長がこの先どのような方向に進んでいきたいのか、その意図がほとんど見えなかった。

FOMC後の市場の反応は見ての通りだ。発表があった15日の「金利見通しの引き上げ」を悪材料視したのはほんの一瞬だった。その後、一時的に株式市場は調整したものの、結局ナスダック市場は6月末に年初来高値を更新した。

結局、FRBの警戒をほとんど無視する形で投機資金の流入が続いているということであり、市場の過熱やインフレ再燃への警戒感を緩めていないパウエル議長が、そうした展開を歓迎するとも思えない。FRBが市場をコントロールできていないのは明らかで、相場の反転にわく市場とは裏腹に、かなり深刻な状況に陥っていると考えておいたほうがよいのではないか。

何が今の株高を支えているのか?

それにしても、FRBが11回ぶりに利上げを見送ったとはいうものの、10会合連続で合計5%の利上げを行ったにもかかわらず、株式市場が依然として力強い回復を続けているのは、どういうことなのだろうか。

ごく単純に言えば、それだけ市場には資金が潤沢に残っているということだろう。昨年春からFRBは積極的に利上げを行い、同時に量的引き締め(QT)を進めることで、市場から資金を吸収しようとしている。だが、それでも市場はまだまだジャブジャブの金(カネ)余り状態にあり、株式市場にもかなりの勢いでマネーが流入しているというわけだ。

コロナ禍で停止してしまった経済を立て直すため、2020年春以降に行われたFRBによる急速な利下げや記録的なペースでの量的緩和、そして過去に例のない政府の財政出動が、度を越した金余りの状況を作り出したのは間違いない。こうしたジャブジャブの金余り状態が株価を高止まりさせ、経済の落ち込みを食い止めているということなのだろう。

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