債務上限問題決着後、米国株は下落の懸念がある FRBの「金融引き締め」は今後もまだまだ続く

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債務上限問題で楽観的な見通しを示すバイデン大統領。ハイテク株も急伸するなどアメリカの株価に強気な見方をする関係者が増えているが、今後はどうなるのか(写真:ブルームバーグ)

まずは、アメリカ経済の先行きを見るうえで欠かせない、物価の動きを少し前から追っていこう。

同国の4月の消費者物価指数(CPI、5月10日発表)は、市場が懸念していたほどに強い数字とはならなかった。総合指数は前年同月比で5.0%の上昇となり、3月とほぼ同水準の伸びとなった。また、変動の激しいエネルギーと食品を除いたコア指数も同5.5%の上昇と、これも3月の同5.6%上昇からはやや伸びが鈍った格好となった。

事前の市場予想平均とほぼ一致しており、とくにサプライズという印象はなかった。だが、発表後には長期金利が低下、株価指数先物には買いが集まるなど、市場の反応はかなり大きなものとなった。

ナスダック総合指数はこの日、銀行破綻ショック後の戻り高値を終値で抜き、1万2300ポイント台を回復した。直近(5月26日)では、画像半導体大手エヌビディアの好決算などもあり、同総合指数は1万2975ポイントと、2021~2022年の下落分のほぼ半分を回復している。

アメリカのインフレは収まったのか

10日のCPI発表後に市場が強気になったのは、最近のインフレを主導してきたサービス価格や家賃などの住居費が、前年同月比では前月を下回る伸びにとどまったことが挙げられそうだ。実際、サービス価格は前年同月比で6.8%の上昇と、3月の同7.2%から伸びが鈍化。住居費も同7.4%の上昇と、やはり3月の同7.8%上昇から減速した。

これらの指標については強い伸びが続いてきたことから、これまでもジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長が何度となく懸念を表明してきたところだ。

5月26日に発表された4月のPCE(個人消費支出)物価指数が市場予想を上回るなど、足元ではさまざまな指標が出ており、判断が難しいところだが、2020年10月から一貫して前月を上回る伸びを見せてきたサービスが2カ月連続で、また2021年1月から強い伸びが続いていた住居費も3カ月連続で前月を下回る伸びとなった。これらのことから「ようやくインフレが鎮静化する兆しが出てきた」と判断してもいいかもしれない。

もちろん、6月2日に予定されている5月雇用統計をはじめ、今後の経済指標の内容による。だが、6月13~14日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げがいったん見送りとなる可能性は、それなりに高いと思われる。

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