債務上限問題決着後、米国株は下落の懸念がある FRBの「金融引き締め」は今後もまだまだ続く

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今後のリスクシナリオは、以下の2つだろう。

1つ目は、前出の懸念が顕在化、アメリカの経済が悪化し、深刻な景気後退に陥るというシナリオだ。実際、FRBは景気抑制的な政策金利を維持しているだけでなく、並行して現在も量的縮小(QT)を進めていることも忘れてはいけない。

2つ目のリスクは、与野党間の協議が大詰めを迎えているとされる連邦債務上限問題だ。政府の資金繰りがつかなくなる「Xデー」について、当初は6月1日とされていたが、ジャネット・イエレン財務長官は連邦議会議員向けの書簡で「6月5日」としている。

万一、連邦政府が債務不履行(デフォルト)に陥った場合の影響は計り知れないだけに、債務不履行が実際に起こってしまう可能性は低そうだ。ジョー・バイデン大統領が「(野党・共和党との交渉については)非常に楽観的だ」と繰り返し述べていることからも、与野党はギリギリの段階で妥協に応じ、最悪の事態を回避するものと考える。

「Xデー」回避でも、FRBの金融引き締めは続く

最新の状況では、与野党で時限措置を設定して、その期間は政府債務が上限に到達することを回避するなどの案が有力だ。だが、一部低所得者層への支援を削りたい共和党と、維持したい民主党との溝は完全には埋まっておらず、最悪の事態が避けられるとしても、ギリギリのタイミングでのことになりそうだ。

筆者が住むアメリカは29日がメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日、南北戦争だけでなく、それまでの戦争で亡くなったすべての兵士を追悼する日)で3連休となる。3連休中に与野党が合意に達しても、そうでなかったとしても、最終的には協議はまとまるだろう。

だが、当面の債務上限問題が回避され、株価が上昇したとしても、FRBの金融引き締めリスクが消えるわけではない。株価が上昇すればするほど、株式市場にはその分、大きな売り圧力がかかってくることになりそうだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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