LMにGX…「新車連発」に見るレクサスの方針転換 自らの首を締めていた「決まり事」からの脱却

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このように、2005年ごろにあったレクサスマストは、ユーザーニーズや販売促進のために、20年近い歳月を経て弱くなってきた。その結果、「NX」や「UX」といったSUVの充実もあって、レクサスの登録台数も増えている。

これまでレクサスで最もコンパクトだったのSUVのUX(写真:トヨタ自動車)

2010年のレクサスの国内登録台数は約3万3000台だったが、コロナ禍前の2019年は約6万2000台と倍増しているのだ。

LM、LBX、GXの国内投入は、この延長線上にある“レクサスの変革”であると見ている。以前のレクサスは、トヨタブランドとは違う独自性にこだわり、セダンを中心にラインナップし、トヨタ車のボディをベースにしたレクサス車を拒んできたが、今後は取り組み方が変わるのだ。

トヨタ車ベースでブランドイメージは?

LMは「アルファード/ヴェルファイア」のボディがベースだし、GXは次期「ランドクルーザープラド」を基本とする。LBXは、ヤリスクロスとパワーユニットやプラットフォームを共有するクルマだ。

これまでなら海外でしか販売されなかったようなトヨタ車ベースのレクサスが、日本にも導入される。ここから「トヨタ車の数だけレクサス車がある」という、レクサスフルライン戦略が始まる可能性が高い。

そうなれば、国内のレクサスの売れ行きは大幅に増えて、メルセデス・ベンツも追い抜くだろう。その代わり、レクサスのブランドイメージも変わる可能性がある。

LBXはヤリスクロスをベースとした全長4190mmのコンパクトなボディを持つ(写真:トヨタ自動車)

コンパクトSUVのLBXは、360万円程度からの価格に設定するようだ。身近な価格のレクサス車として好調に売れるであろうが、約400万円からスタートするUXの販売は落ちるだろう。レクサスの中で、ダウンサイジングが始まるわけだ。

そこに、プレミアムブランドの難しさがある。仮に「ノア/ヴォクシー」や「シエンタ」と基本部分を共通化したレクサス車を開発すれば、きっと多くの販売台数を見込めるであろう。しかし、販売台数アップと引き換えに、ブランドイメージはファミリー方向に変化してしまう。

こうした事態を避けるため、アルファード/ヴェルファイアをベースにしたLMは、3列シートではなく、2列シート4人乗りの豪華仕様のみで販売をスタートする。

LMの4人乗り仕様はまるでリムジンのような仕立て(写真:トヨタ自動車)

価格は「LS500h」の上級グレードと同等となる1400万~1700万円と予想されるが、これはアルファード/ヴェルファイアのトップグレード「エグゼクティブラウンジ」の約2倍に相当する。

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