フェラーリとの戦い降りたランボルギーニの矜恃 「価値観のヒエラルキー」を設ける重要さ

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例えば、ChatGPTに夏休みのアイデアを聞いたとき、自分だったら2つくらいしか思い浮かばないのに対して、10くらい提案してくれるかもしれない。新たな欲望を生み出す、世界を広げるという意味では、負のライバル的模倣の問題を解決するソーシャルイノベーションなのかもしれないと思っています。

――どちらかというと、ポジティブな欲望を生み出すと。

悪いものも含めていろんなものが増えるでしょう。ちょっとアンビバレントだと思うんです。これが総合的にプラスなのかマイナスなのか、現時点で判断することはできません。しかし、私はこれを欲望の発生源として捉えています。そして新たな欲望が生み出されることによって経済全体が変化する可能性があると思います。

模倣理論を知って人生がよりシンプルになった

――本の中ではご自身の経験をかなり共有していますが、模倣理論に出会うことによって、人生における優先順位は変わりましたか。

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私はまだ起業家をやっていますが、今は40年後に経営していたいと思っている会社を始めています。最初の4つの会社を立ち上げたときは、できるだけ早く売りたいとしか考えていませんでした。というのも、私は事業から撤退して次の事業に移るという薄い欲望に駆られていたからです。今、私は、自分にとって濃い欲望であり、できれば一生投資できるようなものを作ることが重要であると理解しています。

そのおかげで、人間関係も変わりました。取引的な関係ではなく、より魅力的な関係になってきたと思います。私の人生は本当に大きく変わりました。今、私の意思決定プロセスでは、何にイエスと言い、何にノーと言うかは、自分の濃い欲望と、自分が世の中に与えることができると感じる影響によってのみ決まります。人生がよりシンプルになりました。

価値観やその優先順位がもっと小さく、明確にすることができれば、人生はもっとシンプルになります。家族もその1つであることは間違いありません。私は以前と変わらず一生懸命働いていますが、気持ちが散漫になることはありません。以前のように燃え尽きている感じはもうないのです。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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