ワグネル「裏切り」で露呈したプーチン体制の弱点 プリゴジンのことは最後まで信頼していた?
今年のプリゴジンの暴挙に対するプーチンの忍耐は、同氏の政治的な目的を果たしたかもしれないが、ロシアのトップに対するプリゴジンの口撃に唖然とした当局者を、プリゴジンは大統領による暗黙の支持を享受していると結論付けるよう促したと、アナリストらは分析する。また、プリゴジンは武装反乱を起こしながらも、「これはクーデターではない」「大統領の権限」は維持されると主張した。
ただちに権力掌握が崩れる兆候はない
プーチン大統領の個人的見解をめぐる混乱が収まったのは、24日の朝、大統領が国民に向けて5分間の演説を行い、プリゴジンを名指しすることなく裏切り者と評し、この準軍事指導者が起こした蜂起を鎮圧すると宣言したときだった。しかし、ダメージはすでに大きかった。
プーチンの権力掌握が崩れようとしている兆候はすぐには見られず、ロシアのエリート層で公にプリゴジンに味方する者はいなかった。プーチンの非公式な権力構造の中枢にいる他の有力者たち(ロシア南部チェチェン地域の強権的指導者で、独自の準軍事組織を支配するラムザン・カディロフを含む)は、24日に大統領支持の声を上げた。
確かに、24日の目まぐるしい動きの中で、プリゴジンが水面下で何らかの支持を集めていたかどうかは知る由もない。
いずれにせよ、今回の出来事は、プーチンがロシアの指揮官として23年の間に築き上げた非公式な権力構造の顕著な帰結である。20年以上にわたって、このシステムはプーチンの比類なき権威の確保に役立ち、プーチン自身が現代ロシアにおける富と影響力のカギを握っていることを示した。
プーチンを知る人々によれば、プーチンはつねにこの個人的なシステムに安住していたという。それは、大統領を貶めかねない対立閥の台頭を防ぎつつ、信頼できる側近に重要な仕事を任せることができたからだ。
そして、裁判所、議会、報道機関、複数の保安機関に至るまで、国家機関がそれ自体で影響力を持つのではなく、プーチンが仲介する内部でのパワープレーの道具にすぎないことも明らかになった。