スバル、EVの「寒冷地対策」で生じる課題と商機 温度管理の技術に注力する電池戦略は実るのか

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スバルは雪道など悪路の走破性に定評があり、「スノーベルト」と呼ばれるアメリカ北部の降雪地帯で高い人気を誇っている。その特長をEVでも継承できるのか(写真:SUBARU)

「電気自動車(EV)に使われるバッテリーのリチウムイオン電池は、人が快適と感じるような温度条件でないと十分な力を発揮できない。低温だと(思うように)充電できないし、高温だと最悪の場合には発火する。どうやって温度管理してくか、自動車メーカーの実力が問われるところだ」

SUBARU(スバル)の藤貫哲郎CTO(最高技術責任者)は、同社が6月21日に開いた株主総会の質疑で、EV向けの電池戦略で重視する部分について、そのように語った。

そのうえで、「品質問題を起こすと大きな迷惑がかかる。そういったリスクを考えたときに、われわれが新しいバッテリーを追い求めることが正しいのかどうか」と述べ、現時点では独自の電池開発について消極的な姿勢を示した。

アメリカ「一本足」、特に寒冷地で強み

スバルの2022年度(2023年3月期)の世界販売台数は、半導体不足も響いて同社としては低調な85万台だった。そのうちアメリカが7割弱の59万台という「1本足」状態にある。

アメリカ市場では北西部、北東部といった寒冷地に強い。雪道をものともしない悪路走破性や安全性能を売りにするSUV(スポーツ用多目的車)によってニーズを掴んできたからだ。

こうした得意エリアを持つことから、EVシフトを見据えた電池の寒冷地対策は、喫緊かつ重大な課題になる。スバルは平時でも年間の世界販売台数の目安が100万台のスモールメーカー。莫大なカネがかかる電池自体の開発ではなく、電池の温度管理の技術開発にウェートを置くのは、いかにも「選択と集中」を掲げるスバルの生き方らしい。

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