「人事部門を置かない中小企業」が手遅れになる訳 会社で起こっている問題、「人事」が原因かも

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会社にとって本来重要なはずなのに、なぜ人事は後回しにされてしまうのか。まずはこの疑問を解決するために、人事の全体像をざっくりと見てみましょう。

(出所:アルファポリスビジネス編集部)

人事とひとことで言っても、実は非常に幅広い領域があります。大きく分けると、「人事・採用」「給与・厚生」「育成・評価」という3つの分野があり、それぞれに「戦略」「企画」「運用・管理」「オペレーション」という職務があります。

企業は、創業期→成長期→安定期→変革期という4つの成長ステージがあると言われています。会社が立ち上がったばかりで人数も少ない「創業期」や売上が拡大する「成長期」の前期に、まず必要となる人事業務は、図の一番下にある「給与・厚生」のオペレーションです。

「とりあえず給料はしっかり払おうぜ」「人を雇ったら社会保険にも入らなくちゃね」「入退社の手続きもちゃんとやらないとダメだよね」となって、まずは給料の計算や支給、社会保険・入退社の手続きなどから始めることになります。

これらは最低限必要なことですから、どの会社でも必ずやっているはずです。社長が自ら行ったり、事務の人に手伝ってもらったり、社労士さんにお願いすることが多いでしょう。

次に「人を採用しなきゃ」となって「人事・採用」のオペレーション=人材募集や採用業務が必要となります。これも社長が自らやるか、事務や総務の人が担当することが多いでしょう。

やがて会社が成長して、お客さんが増える、商品がどんどん売れる、という状態になってくると、ビジネスを回す人が非常に大事になってきます。営業の会社であれば営業担当者、技術の会社であればエンジニアですね。「お金を稼いでくれる部門に人を入れていこうぜ」という話になってきて、使える人材や優秀な人材は前線に置きます。

この段階で人事が重視されることはありません。当然そこに人を割かれることもありません。 

人事部門が必要になるタイミングとは?

なぜなら人事業務は、「とりあえずちゃんとやっておいてくれればいいから」という位置づけになっているので、それほど多くのことは期待されていないのです。

給与計算や入退社、採用などの手続きは、やらなくてはいけない大事な業務ではありますが、社長の関心は会社の成長や戦略など、もっと先にあります。実際のところ、「面白くないことはお前らでやっておいてくれ」と思われていることも少なくありません。

これは人事に限らず、経理や総務など、管理部門すべてがそうでしょう。「お金を稼いでくる部門」と「そうでない部門」に分けられ、前者が優先されるわけです。

しかし、ビジネスが成功して、お金が回りだすと、経理は必要になってきます。人が増えれば「オフィスどうする?」といった課題も出てきて「総務も大事だよね」という話になります。

つまり管理部門で最初に立ち上がるのは、まず経理。次に総務。人事は、いちばん最後です。

創業期の会社は、夢があります。希望もあります。みんな前を向いて仕事をしていますから、お給料が少なくても、残業が多くても、気にする人はほとんどいません。

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