同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第2回)--表彰を楽しんだら経営好転

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この会社は過去に経営が悪化し、倒産の危機に直面したことがあった。出路さんも社員も休みなく必死に働いたが、業績は悪化の一途をたどるばかりだった。出路さんはストレスから胃潰瘍になるし、家族にも病人が続出するなどまさに絶体絶命のピンチに陥った。そこで「もうどうなってもいいや!」と開き直り、「どうせなら楽しくやろう」と腹をくくったのである。すると不思議なもので病気も治り、会社の経営も好転していった。

その経験から、経営は楽しく、「ちょっとアホ」なくらいのほうがうまくいくと悟ったという。したがって表彰も、優劣を決めるのではなく楽しむことに主眼を置いている。以前は個人を対象にした賞もあったが、今はチームや店舗単位で表彰しており、できるだけたくさんのチームや店舗を表彰するよう心掛けているそうだ。

表彰にはいくつかのタイプがある。社長賞や会長賞のように、特に優れた業績を上あげた個人やチームをトップが称える「重い」表彰もあれば、ヒューマンフォーラムで取り入れているような「軽い」表彰もある。あらゆる社員に受賞のチャンスを与え、楽しく仕事をさせるとともに職場の空気を明るくする。そうした目的からは、この「軽い」表彰がピッタリだ。この会社でも、表彰制度を取り入れてから「職場の雰囲気が明るくなった」といわれる。

ちなみにアメリカの会社ではこのタイプの表彰が盛んで、オフィスを訪ねると賞品としてもらったTシャツ、マグカップ、帽子などがあちこちに飾られているのをみかける。

日本でもファストフードの店などでは、唐揚げの選手権や宅配ピザを安全に配達するコンテストなどを行い、明るい雰囲気の表彰式では工夫を凝らした商品が贈られている。学生アルバイトなどはサークル感覚のノリで楽しんでおり、それが仕事の「やる気」にもつながっているようだ。

このタイプの表彰は、商品代を含めてもコストがあまりかからない。表彰のコストとベネフィットを考えたら「割得」な表彰である。もっともっと普及させる余地がありそうだ。

おおた・はじめ
同志社大学政策学部教授。日本表彰研究所所長。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。京都大学経済学博士。滋賀大学教授などを経て2004年より現職。著書に『「不良」社員が会社を伸ばす』『認め上手』など多数。

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