赤字ローカル線の惨状、本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も
それにもかかわらず、小海線の乗車人員は2000年と比べて2010年は30%減、2020年に至っては人口増で若干持ち直しているものの、2000年比で26%の減少であり、この差分を取りこぼしたままとなっている。
沿線人口を維持、あるいは増えているにもかかわらず利用者数が3割減とは、鉄道が移動の選択肢から外れる要因に手を打つことができなかった鉄道事業者の落ち度ではないだろうか。
通常、人口1人あたりの鉄道利用回数が変わらなければ、人口減少率を超えた鉄道利用者の減少率にはならないはずであり、人口減少だけを利用減少の理由にするには無理がある。
米坂線の小国―坂町間については、10代後半の人口はあまり減っていないのに大幅な減少だ。こちらは2000年比で10代後半の人口は2010年で4%増、2020年はほぼ同レベルを維持している。沿線人口は全体で2020年までに18%減っているとはいえ、乗車人員は36%も減っている。ローカル線の大口顧客である通学生はほぼ減っておらず、沿線人口の減少率の2倍も客が減るのは、人口減少のせいにする前に商売のやり方のまずさに気付くべきところもあるのではないか。
首都圏にも実例が
さらに、首都圏にもこのような路線がある。内房線の君津―館山間だ。こちらもこの20年で乗車人員が半減し、列車も新車への置き換えの際に4両から2両に減らされた。ところが沿線人口は1割しか減っていないのである。10代後半に限ってみても3割減だが、高校生人口は全体の5〜6%程度であり、その3割が減ったからといってそう大きな差にはならないはずである。
陸羽東線の最上―新庄間も内房線と同じ傾向だ。こちらは人口2割減だが乗車人員6割減だ。高校生は半減だがこちらも全体の5%に過ぎない。となると、これは事業者側の商売音痴がローカル線の衰退を招いたというべきではないだろうか。
他業界のビジネスパーソンなら、市場の人口が増えている、あるいは微減しかしていない状態にもかかわらず客数や売り上げが半減したら、担当者は幹部から何をやってるんだ!と叱責の対象となり、責任を追及されるはずだ。
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