赤字ローカル線の惨状、本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も

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大阪産業大学の那須野育大准教授の研究「JR地方交通線の輸送需要に関する考察」(公益事業研究第74巻第1号・2022年発表)では、列車本数や運賃施策が輸送密度に有意な影響を及ぼすとしている。つまり値上げや減便をすれば客が減るし、逆に値下げや増便によって客が増える方向に有意な影響があるということだ。

内房線の南半分についていえば、列車接続はかなり良いほうではある。ただ本数が少なかったり、東京直通列車がほとんどなかったりするため、東京湾アクアライン開通による高速バスの設定にトドメを刺されたのかもしれない。だが、それならば何か高速バスに対抗するような施策を講じただろうか。東京直通の特別快速を1日1往復、1年間走らせたくらいではないだろうか。これでは「やってはみましたよ・けどダメでした」という既成事実を作るための取り組みにすぎない。

「使いたい時間に列車がない」

価格面でも高速バスに対抗しただろうか? 特急料金を取ることに執着して価格競争に敗れた結果、特急がなくなるくらいなら、乗車券と指定席券のみで乗れる快速列車でも走らせていれば運賃を取りっぱぐれることはなかったのではないか。例えばJR九州は高速バスへの対抗で実質往復運賃のみの料金水準で新幹線や特急で往復できる企画きっぷを多数出している。このようにできることはたくさんあったはずである。ところがJRが行ったのは、逆に房総料金回数券を廃止し、特急料金の実質値上げしたことであった。

他の線区はどんな状況だろうか。最近は久留里線の廃線議論でも利用減少を原因に挙げているが、住民からは「そもそも使いたいタイミングに列車がないのにどうやって乗れというのか」という声が上がったそうだ。

久留里線
JR久留里線の列車。同線は久留里―上総亀山間の存続問題が起きている(写真:ISO8000/PIXTA)

宇都宮線では高校生の下校のタイミングに走っていた列車が削減され、学校側が残された列車に合わせた時間割への変更を余儀なくされたことが話題となったこともある。先の那須野教授の研究では高齢化率や1人あたり自動車保有台数による悪影響もあるとしているが、ならば高齢者の利用促進や車より高いアドバンテージの実現といった努力をすべきである。

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