iPhoneの「アプリストア開放」に残る大きな疑問 政府が義務化方針、競争と安全は両立できるか
「開放」の義務づけは、はたしてユーザーの利益につながるのか。
政府は6月16日、デジタル市場競争会議で検討されていた「モバイル・エコシステムに関する競争評価」の最終報告をまとめ、公開した。
アップルとグーグルが市場を二分するスマートフォン向けOS(iOSおよびAndroid)について、非競争的と考えられる仕様やライセンス条件を列挙し、それに対応する規制の方針を示している。
今後、政府は報告書に沿う形で法案を作成し、国会への提出を目指すとみられる。しかしその中には、スマホのセキュリティ対策を後退させかねないような規制案がある。
アプリストア開放がもたらすリスク
一般ユーザーへの影響が大きいと考えられるのが、いわゆる「アプリストア」問題だ。報告書は、アップルとグーグルがスマホアプリの流通・決済手段を独占しているとして、アプリストアの運営を他社にも開放することを求めている。
この問題のポイントは、大きく3つに分類できる。①アプリ料金やアプリ内課金の決済を自社システムに限定していること、②アプリ内から他サイトへ誘導して、独自の課金システムに登録するよう情報提供、誘導することを禁じていること、③アプリストアが他事業者に開放されていないこと、だ。
こうした寡占的な構造が、手数料の高止まりなどにつながっていると指摘されていた。実際、アップルとグーグルはそれぞれが提供しているアプリストアで、アプリ開発事業者に15%ないし30%の手数料を課している。
iPhoneやiPadでは、アップルが運営する「App Store」からしかアプリをダウンロードできない。一方、グーグルのAndroidでは、「Google Play」以外のアプリストアを独自に導入することは可能だ。そのため本記事では、アップルのApp Storeにフォーカスして話を進めたい。
App Storeを開放すべきとする政府方針について、その弊害の大きさに対し、得られる利益は極めて少ないというのが率直な感想だ。
最終報告の提案通りにアプリストアを開放した場合、悪意あるアプリが流通し、セキュリティ問題を発生させる懸念がある。そのリスクを冒して開放したところで、競争力のあるアプリストアが生まれる可能性は極めて低いだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら