逆風の100均業界、セリア「驚異の利益率11%」の訳 「薄利多売ビジネス」でもしっかり儲ける仕組み

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【セリアの粗利益が大きい理由③】事業規模が大きく、仕入れなどにおいてスケールメリットが働く

3つ目の理由は、仕入れにおけるスケールメリットの存在です。セリアの2021年3月期の売上高はワッツの約4倍の規模となっています。

商品の仕入れにあたっては仕入れの量が大きいほどディスカウントが利くことから、セリアの売上高の規模が大きいことも、原価率を引き下げることに貢献していると考えられます。

「効率」「コスト減」両方を追い求めるセリアの仕組み

次に、2社の販管費率の差についても見てみましょう。ワッツの販管費率が35%であるのに対し、セリアでは33%であり、こちらについてもセリアのほうが低くなっています。

販管費率を引き下げるには、大きく分けて2つの方法があります。1つは販売効率を上げて販管費率の分母である売上高を高めていく方法、そしてもう1つは販管費そのものを引き下げる方法です。

セリアでは、独自の発注支援システムを導入し、品切れを防ぐとともに店頭に売れ筋商品を揃える在庫管理を行って販売効率を高めています。店舗でかかる人件費や地代家賃は、売り上げの増減にかかわらず一定額がかかる固定費的なコストです。そのため、高い販売効率で販管費率の分母である売上高を高められれば、販管費率は低下します。これが、セリアの販管費率が低くなっている1つ目の理由です。

そして2つ目の理由は、前述の発注支援システムにより、パートやアルバイトでも在庫管理ができるような仕組みを構築していることにあります。その結果として、ワッツにおける従業員全体に占める正社員の比率が14%であるのに対し、セリアでは4%に抑えられています。

このように、セリアは原価率と販管費率の両方を下げることにより、ワッツに大きな差をつける高い利益率を実現していることがわかります。

原材料価格の高騰や円安の進行によって、100円ショップの経営には逆風が吹いているといわれます。厳しい時代をどう勝ち残っていくのか、今後の各社の戦略に注目したいところです。

矢部 謙介 中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授

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やべ・けんすけ / Kensuke Yabe

ローランド・ベルガー勤務などを経て現職。マックスバリュ東海社外取締役も務める。著書に『決算書の比較図鑑』『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』など。

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