【産業天気図・石油】原油高で在庫評価益が発生。価格転嫁も80%ほど完了し増額修正

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新日石など石油元売り各社は、今2006年3月期の利益を増額修正した。原油高で在庫評価益が期初想定以上に膨らむためだ。「先入れ後出し法で特約店への販売価格を決めるが、コストになる原油価格は総平均法で決める」(平井茂雄・新日石常務)ため、原油価格の上昇局面で在庫評価益が出る。新日石の在庫評価益は04年が602億円。05年度はWTI48ドル前提に、212億円出る。
 足元、原油が高騰しているが、「原油価格高騰分の80%は転嫁している」と出光興産首脳。「SSでのガソリン、軽油の価格転嫁は順調だが、SS以外の販売、例えばトラック業者向け軽油の直接販売などは苦戦している」(昭和シェル首脳)ものの、総じて原油高の吸収は進んでいる。
 日本の石油精製・販売には、今のところフォローの風が吹いている。(1)原油高による在庫評価益、(2)進む製品価格への転嫁、(3)石油化学市況の高値による高水準の部門利益、(4)石油化学が好調のためガソリンの需給が引き締まっていること、(5)原油高による上流の石油開発利益の拡大、(6)アジアへの製品輸出の拡大−−などである。一方、リスク要因としては、ガソリン価格など製品価格の上昇で国内販売数量が伸び悩みの兆しを見せていることが挙げられるが、当面の空模様としては、原油高の恩恵を受ける今期は『晴れ』、原油価格の不透明な来期は『曇り』と見ておくべきだろう。
【内田通夫記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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