アスキー創業者、西和彦氏が見た「天国と地獄」 借金40億円経験、出資先の経営悪化で破産も
──マイクロソフト時代をはじめとして、絶頂からどん底までかなり浮き沈みの激しい過程を経ていますね。
アップダウンということで言えば、4つのステージがあった。最初はマイクロソフトの副社長、2番目がアスキーの社長、3番目がアスキーを辞めた後の大学教員、4番目が大学を65歳で定年退職して、新たな大学の設置を進めている今だ。
──アスキーの時代は保有株もあって、まさに富裕層だったのではないですか。
株はピーク時で300億円くらいあった。ただCSKがアスキーに出資する際に、アスキーで利益を生み出していない「不良債権」部分を個人で引き取っている。それが私の借金生活の始まりだ。会社がよくなれば株価が上がって、その株で不良債権は償却できると考えていた。
失敗は何かというと、150万株の持ち株をいっさい売らなかったこと。億万長者みたいなお金はまったく手に入っていない。
不良債権で「借金40億円」
──アスキーの不良債権部分を引き取ったことによる借金は、どのくらいあったのですか。
約40億円だ。20年以上借金生活だったので、ぜいたくをしたような覚えはない。アスキーの経営がいいときに、美術品を10億円ぐらい買っているが、それも会社に残してきている。仕事柄、CDやDVD、書籍、雑誌をたくさん買ったぐらいだ。
──アスキーを離れてからさまざまな大学で教鞭を執られていますが、ご自身で大学を新設しようという考えに至ったきっかけは何だったのでしょうか。
そもそもは、日本にコンピューターなどハードを作れるようなエンジニアが不足しているという問題意識からだ。不足している要因は、大学でまともに指導できる教員が少ないから。半導体を作ったことがない人に、半導体について説得力のある指導ができるのかという話だ。であれば自分の実務経験を基にして、教育に携わりたいという思いがずっとあった。
(17年から)東京大学の教員をしている中で感じたのが、東大生クラスの賢い人は、世の中にゴロゴロいるということ。東大は漢文や古文、日本史や世界史など360度において勉強ができないと入学できない。それだけ優秀ということでもあるが、優秀さにおいて360度の学力は必ずしも必要ではない。
東大に入れなかった、入ろうとも考えなかった人たちの中に、ピカピカに優秀な人は確実にいて、そうした学生を集めて、東大レベルの教育を施し、エンジニアとして社会に羽ばたいていってもらいたいと考えている。
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