悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠
それが一転して、紙くずになってしまったのは今年3月のこと。クレディ・スイスは経営不安が一気に高まり、同国金融最大手のUBSグループと株式交換による救済的な買収で合意。さらに、中央銀行のスイス国立銀行から流動性支援(臨時の資金供給)を受けた。
スイス連邦金融市場監督機構はそうした支援策が、クレディ・スイスのAT1債が規定する「元本削減条項」に抵触するとして、無価値化すると判断したわけだ。
紙くずになったAT1債の総額は約160億スイスフラン。日本円に換算すると約2.4兆円にも上る。金融庁の調べでは、日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令を出すなど、騒動は広がるばかりだ。
仕組み債でも損失の悲劇
急転直下の事態を受け、4月に入ると日本でも企業や富裕層から悲鳴が次々と上がった。
ゲームソフトなどの開発を手がけるコーエーテクモホールディングスは、AT1債への投資によって41億円の損失を計上。「箱根駅伝」で名をはせた青山学院大学陸上競技部の原晋監督は、「平均年収のウン倍」を失ったとインターネット番組で嘆き、大きな話題になった。
足元では金融分野に強い弁護士事務所の間で、被害を受けた富裕層に広く声をかけて集団訴訟に持ち込もうとする動きが広がり始めている。
訴訟に向けて弁護士らが着目しているのが、販売していた証券会社が元本削減条項などのリスクについて、どれだけ説明責任を果たしていたかという点だ。
実際のところはどうなのか。ある証券会社が作成した契約締結前交付書面を見てみよう。
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