日本企業が疎い投融資先の思わぬ「人権リスク」 人権デュー・ディリジェンスを知っていますか

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また、人権リスクに対して求められる取り組みは、企業の関与の程度にもよる。企業は自ら人権侵害を引き起こしたり(例として、自社工場の作業員を適切な安全装備なしで危険な労働環境において労働させる場合)、また、引き起こすまでには至らなくとも直接・間接に助長した場合(例として、過去の取引実績から考えると実現不可能なリードタイムであることを知りながら、そのリードタイムを設定してサプライヤーに対して納品を依頼した結果、そのサプライヤーの従業員が極度の長時間労働を強いられる場合)は、当該人権リスクを防止・軽減することが求められる。

そして、いずれの場合にも当たらないものの、企業活動が人権侵害と直接関連する場合(例として、事業活動のためにある企業への貸付を行ったが、その企業が自社との合意に違反し、地域住民を強制的に立ち退かせる場合)にも、状況に応じてその影響力を行使してリスクの防止・軽減に努めることが求められる。

投融資先の人権リスク

このようなガイドラインの考え方は投融資の際にも同様に該当する。例えば、企業が、投資先企業が保有する工場における廃水処理のための高額な設備の導入が地域の飲料水の汚染を防止するために必要であると認識しているにもかかわらず、その企業が導入案に反対することで、投資先企業の工場による排出水がその地域の飲料水を汚染する場合は、投融資を行った企業が人権侵害を助長した例に当たるとされている。

さらに、投融資の際には、投融資先の活動を通じた間接的な関与が問題となることから、当該投融資と、投融資先の人権リスクとの結びつきの程度も考慮する必要がある。例えば、プロジェクト・ファイナンスやアセット・ファイナンスなど特定の事業や資産を引き当てとし、当該事業・資産との関連で人権侵害のリスクが生じた場合や、コーポレート・ファイナンスを行った企業に人権侵害のリスクが生じた場合などは、投融資と人権リスクの結びつきが相対的に強いと考えられる。

このように人権リスクとの結びつきが強い場面などにおいて重要な投融資決定を行う場合には、人権デュー・ディリジェンスとして投融資先の人権リスクを検討し、人権リスクに関する表明保証条項を定めることや、人権リスクが発現した場合に調査し、あるいは報告を求めるとともに、取引関係を一時停止・終了することができるようにしておくことが考えられる。また、とくに投融資が長期間継続する場合には、定期的な人権デュー・ディリジェンスを実施し、人権リスクの増減についてモニタリングを行うことも検討に値する。

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