警告「ChatGPTを信じる人」が破滅する明快な理由 生成系AIは使い方によっては有害になりうる

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ただし、以上で述べたことは、AIがまったく役に立たないということではない。使い方によっては極めて有用だ。

まず、信頼できるとわかっている資料を示して、その内容を要約したり、翻訳したりしてもらうことができる。この過程では、誤った情報はおそらく混入しないだろう。この方法によって情報収集能力が著しく向上する。特に、言葉の壁に悩んできた日本人にとっては、海外の情報へのアクセス手段として大変重要だ。

ただし、「信頼できる資料は何か」と生成系AIに質問をすると、いい加減な答えが返ってくる。あまり信頼できそうもない資料を挙げたり、あるいは、そもそも存在しない文献をでっち上げたりする。

生成系AIが驚嘆すべき能力を発揮する分野

もう1つ、ChatGPTなどの生成系AIが驚嘆すべき能力を発揮するのは、文章の校正だ。とりわけ、音声入力で作った誤変換だらけのテキストの校正である。私がこれまでさまざまに試みたところでは、これこそが、最も安全で、効率的で、賢いAIの利用方法だ。

このような利用法を見出すのが、重要である。

「神はたくらみ深いが悪意を持たない」(Raffiniert ist der Herrgott, aber boshaft ist Er nicht)とは、アインシュタインの有名な言葉である。AIは間違いを犯すが、それは、AIが悪意を持っているからではない。問題が起こるのは、人間がAIの使い方を誤っているからである。

だから、それに対処するのは、悪意を持つ人間を相手にするよりは、ずっと容易であるはずだ。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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