「ウイグル問題」を日本企業が無視できない理由 アメリカの輸入規制強化は何を意味するのか
余りは調査中の件数となるが、どのような根拠において税関の通過が認められたのかは判然としない。そのため、特に、自社の製品(またはそれが組み入れられる最終製品)がアメリカに出荷されることが想定される企業は、サプライチェーンをマッピングし、UFLPAなどに基づく輸入差し止めのリスクがないかどうかを確認する体制を整備する必要性に迫られている。
また、新疆ウイグル自治区との関係では、WROの発出を逃れる目的で、リスト掲載企業等が同自治区から第三国を経由して商品を積み替え、アメリカの輸入制限を回避する「ロンダリング」の問題も指摘されており、新疆ウイグル自治区を直接経由しなかったことのみによってリスクを回避することができるわけではない点にも留意すべきである。
強制労働に関与している企業のリストは要確認
CBPは、アパレル、綿花・綿製品、シリカ系製品(ポリシリコンを含む)、トマト・トマト製品、PVC(ポリ塩化ビニル)といった製品群に関し、強制労働のリスクが高く、執行の優先度が高いとして公表している。これらの製品群の中には、トマトや太陽光パネルの原料であるポリシリコンなど、シェアのかなりの部分が新疆ウイグル自治区(または中国)に頼るものもある。
そのため、企業としては、このような輸入差し止めなどのリスクを踏まえても、調達先を容易に変更できない場合もあると思われるが、少なくともアメリカ輸入品(またはその可能性がある製品)については、よりサプライチェーンの可視化が求められている。
なかでも、CBPが、新疆ウイグル自治区における強制労働に関与しているとして公表している企業のリスト(UFLPAエンティティリスト)に掲載されている企業がサプライチェーンに含まれていないかをチェックすることは重要である。
一方で、新疆ウイグル自治区における強制労働の事実を否定している中国政府は、このようなアメリカの規制に対して強く反発し、中国に対する差別的な制限措置に対して取引停止などの制限を課すことができるとする反外国制裁法を定めているほか、企業が同地区における強制労働の懸念を示したことに対する中国国内での不買運動が行われた事案も複数確認されている。
アメリカ・中国双方でビジネスを行う日本企業としては、このようなアメリカ・中国双方の動きをにらみながら、サプライチェーンの調査手法についても、外部専門家と協議するなどしつつ、慎重に進めることが求められる。
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