「ウイグル問題」を日本企業が無視できない理由 アメリカの輸入規制強化は何を意味するのか
強制労働への規制を強めるアメリカ
人権尊重の動きは近年急速に高まっているが、その中でも中国の新疆ウイグル自治区を巡る動きはグローバルでも注目を集めている。
アメリカ当局の公表によれば、中国政府は、新疆ウイグル自治区において、「相互ペアリング支援プログラム」と呼ばれる、中国企業が同地区に工場を設立して収容所と連携することを促進するプログラムや、「貧困軽減プログラム」と呼ばれる、貧困撲滅と称してウイグル族などを中国各地の農場や工場に配置するプログラム等による強制労働を組織的に行っているとのことである。
また、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)も2022年8月に、職業訓練の名目で同地区内の施設にウイグル族を収容するなどの深刻な人権侵害が起きているとの報告書を公表しており、同地区における人権侵害は国際的にも重大な問題として認識されている。
アメリカはもともと他国に先駆けて、関税法等を根拠とした人権侵害への輸入規制を積極的に行ってきた。執行当局であるアメリカ税関・国境警備局(CBP)は、アメリカに輸入されようとする貨物が強制労働により製造された疑いがあると判断した場合、当該貨物の調査を開始することができ、調査の結果、強制労働により製造されたことを合理的に示す情報が得られた場合、違反商品保留命令(WRO)を発出して、当該貨物の輸入を保留する権限を有している。
CBPは、近年、このスキームに基づいて、海外での人権侵害を根拠とする輸入差し止めを積極的に執行してきた。特に、2021年5月、日系アパレル企業が輸出した衣類の輸入が中国新疆ウイグル自治区で生産された綿花を使用しているとして輸入差し止めを受けたケースは、日本企業に大きな衝撃を与えた。
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