石破茂氏「防衛力整備の財源は法人税で賄うべき」 「自衛官が国会でもっと議論してこそ文民統制」

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石破茂(いしば・しげる)/1957年鳥取県出身。慶應義塾大学卒。1986年衆議院議員初当選。防衛大臣、農林水産大臣、地方創生・国家戦略特区担当大臣、自民党政務調査会長、幹事長などを歴任。著書に『国防』『日本列島創生論』『政策至上主義』などがある(撮影:尾形文繁)

塩田:防衛予算の対GDP比1%ですが、1.5%とか2%という話が出ています。実際の数字を調べたら、1%どころか、2020年度までは0.9%も超えていなくて、2020年度予算は0.889%、2022年度が0.917%、2023年度は急に1.187%です。確かに安全保障環境は悪化していますが、なぜいきなり1.5%とか2%という数字が独り歩きするのですか。

石破:「もう一声」みたいな(笑)。それはドナルド・トランプ大統領の時代、NATO諸国に対して2%を要求した。だから、日本も2%、ということだとすると、議論としてはかなり粗略ですね。

NATOよりも日本の安全保障環境が厳しいなら、2%どころか、3%という議論だって、あるでしょう。その精査なしに、NATOが2%なら日本も2%というのは、論理的にぶっ飛んだ話だと思っています。

防衛装備の適正価格を議論すべき

塩田:実際に必要な防衛費を積み上げていったら、とても1%では収まらず、2%に、というような方式で出てきた予算ではないのですか。

石破:そういうふうには見えません。防衛に関することだから、全部オープンにできるはずはないのですが、戦車が1両10億円、戦闘機1機100億円、潜水艦1隻800億円、イージス艦1隻1700億円と言われても、納税者には、高いのか安いのか、わからないですよね。たぶん、アメリカの戦車と比べて2倍、ドイツの戦車の3倍だと思うんです。1年に10両しか造らない少量限定生産で、工業製品ではなくて工芸品だから、高いんですよ。

納税者の負担に値するものかどうか、誰にもわからない。でも、それは納税者の代表であるわれわれ国会議員がきちんと国会で聞かなければならない。実際に艦船、航空機、車両を操って命を懸けて国を守る自衛官たちが、国会における質問に対して答える義務があると私は思いますが、国会で制服自衛官を見た人は1人もいない。

「自衛官が国会に来るのは、文民統制に対する冒涜」みたいな話がいまだにあるわけですが、私は自衛官が国会に来ないほうがよほど文民統制の冒涜だと思っています。それで、納税者の負担にふさわしいかどうか、本当のところがわかるまでやるべきです。秘密会でもいいですから、実際のユーザーである自衛官も交えて議論し、その結果として2%に、というプロセスが民主主義国として必要です。

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